社内の交流が少ない、ブランド価値を高めたい、もっと活気がほしい……。企業が抱えるさまざまな課題を解決するために、全ての働く人の生活と切り離せない「食」をヒントにできないだろうか。食事を取るだけでなく、コミュニケーションやリラックスの場所として機能するようになった社食は、いまや会社の“顔”にもなっている。社食にまつわる取り組みから、改革のヒントを探る。
→第1回 “安い・早い・多い”だけじゃない 社食で企業価値向上へ
→第3回 社食でついつい選んでしまう「健康メニュー」とは何か
→第5回 本記事
社食が食事提供の機能を超えて、コミュニケーション活性化や働き方の変化に対応する役割を担うようになってきた。本特集では、そういった傾向や事例を紹介してきたが、それは社食でなければ実現できないわけではない。あえて「社食をなくす」という選択をしたキリンホールディングス。そこには、さまざまなコミュニケーションを促進させる仕掛けがある。
同社は2013年、キリングループ16社の拠点を集約する形で、東京都中野区に移転した。現在は、ビールや清涼飲料、ワインなどの事業を行うグループ20社の約2800人が同じビルで働いている。そこには、社内で調理した食事を提供する社食はない。
移転前、原宿などにオフィスがあったころは社食があった。しかし、新しいオフィスにはあえて食堂を作らなかった。なぜだろうか。
「中野の街に溶け込み、お客さまと接点を持つことが必要だと考えたからです。社員にもっと街に出てほしい、という思いを込めています」。キリン人事総務部総務担当の永田知子氏はそう説明する。
原宿などの都心とは違い、中野には生活圏が広がる。会社の外に出れば、キリングループの商品を扱う商店街や飲食店がある。そして近隣に暮らす消費者がいる。街を知ることが、商品を飲んでくれる人々の日常に触れることにつながる。そう考えているのだ。
「会社の前には公園があり、お子さんを連れたお母さんの姿もあります。移転前には見られなかった日常が見えてくるのです。キリングループの商品は、子どもから大人まで、一生の生活に深く入り込んでいく。そういった意識を持つきっかけになっています」(永田氏)
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