無届けで鎮痛剤に中国産使用 和歌山の原薬メーカー近く業務停止か

» 2017年06月22日 13時14分 公開
[ITmedia]

 風邪薬などで広く使用される鎮痛剤「アセトアミノフェン(AA)」製造最大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山県和歌山市)が、国産のAAに安価な中国産を無届けで配合し、製薬会社に供給していたことが6月22日、分かった。

 山本化学工業は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対し、国産の成分を使用して原薬を生産する旨を届け出ていたが、輸入した成分の使用は届け出ていなかったという。

photo 山本化学工業=公式サイトより

 厚労省と和歌山県が5月下旬に立ち入り調査して不正が判明。和歌山県は、医薬品医療機器法違反によって同社を近く処分する方針という。処分内容は業務停止が有力で、現在、和歌山県が具体的な停止期間について検討を進めている段階だ。

 中国産のAAを使用した理由について、山本化学工業は厚労省に「多くの会社から受注があり、当社の生産能力の限界を超えてしまったため、輸入製品を使ってしまった」と述べているという。

 ただ、ITmedia ビジネスオンラインの取材に対し、厚労省の担当者は「実際はコストを浮かせる意図もあったと考えられる」(監視指導・麻薬対策課)とコメントした。

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photo AAは「パブロン」「バファリン」にも使用されている

 厚労省などが中国産のAAの成分を検査したところ、品質面に問題はなく、消費者に健康被害が発生する危険性はないという。

 山本化学工業が供給したAAを使用した風邪薬が市場に出回るかどうかは、「製薬会社の判断に一任しているが、事態の重大さを考慮し、同社との契約を打ち切って他社から原薬の供給を受ける製薬会社が出てくる可能性もある」(同)という。

 山本化学工業は、現在の状況について「答えられることは一切ない」とコメントしている。

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