【詳報】富士フイルム、不適切会計の裏に何があったのか富士ゼロックスを特別扱い(1/4 ページ)

» 2017年06月15日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「富士ゼロックスに対する『過度なリスペクト』が不適切会計の発覚を遅らせた」――富士フイルムホールディングス(HD)の助野健児社長は、6月12日開いた2017年3月期の決算会見でこう釈明した。

 本来、4月27日に決算を開示する予定だったが、ニュージーランドの関連会社「Fuji Xerox New Zealand(FXNZ)」の会計処理に問題が指摘されたため、有識者によって構成される第三者委員会が実態を調査するため、発表を延期していた。

photo 会見での助野社長(12日撮影)

 FXNZは富士ゼロックスの子会社で、複合機の販売やリースなどを手掛けている。富士フイルムHDは当初、不適切会計の要因は「FXNZの15年度以前のリース取引において、月額料金の設定に不備があったこと」などと発表していた。

 だが、第三者委が10〜15年度のリース契約を全て調査した結果、FXNZだけでなく、富士ゼロックスの豪子会社「Fuji Xerox Australia(FXAU)」でも同様の事態が起きていたことが発覚。両社の決算内容の修正が純損益に与える損失額は、想定額を155億円上回る375億円に上った。

 第三者委の報告書によると、FXNZとFXAUは、複数年のリース契約の場合でも、複合機の価格分の売り上げを初年度に一括計上し、その後は月間印刷枚数に応じて月額使用料を徴収する「キャピタルリース」と呼ぶ契約形態を設けていた。

 本来、この契約形態を適用できるのは、リース料総額の回収を確実視できる、一部の優良顧客に限られていた。だが両社はより多くの売り上げを計上するため、顧客の状況を問わず全ての案件をキャピタルリースとして処理した。

 その結果、財務諸表上では売り上げが好調に見えるものの、実際は月間印刷枚数が想定の分量に達しない顧客企業が多数発生。当初の予定を下回る月額使用料しか回収できないケースが常態化していた。中には、契約時に月額使用料の下限値を設定していなかったため、債権を全く回収できない顧客企業も存在したという。

photo 「キャピタルリース」の定義(=第三者委による報告書より)

 助野社長は、FXNZとFXAUが売上高を多く計上することにこだわった理由について「両社では、経営層などのボーナスが変動する『コミッション』と呼ぶ給与体系を設けていたため」と説明。「キャピタルリースを悪用して多くの給与を得ていた人物が存在する」と明かす。

 その人物とは、04年〜15年3月にかけてFXNZで、15年4月〜16年5月にかけてFXAUで社長を務めたニール・ウィタカー氏だ。ウィタカー氏の任期中、2社は高い売上高を計上。同氏は優秀な人物として高評価を受け、多額の報酬を得ていたという。15年に同氏がFXNZからFXAUへ異動となった理由も、その手腕によってオーストラリアでリース事業を拡大することが期待されていたためだという。

 では、親会社の富士ゼロックスは、ウィタカー氏の在任中、彼の不正をどの程度知っていたのだろうか。

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