40歳を超えても、イチローと上原がメジャーで活躍できるワケ赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2017年07月08日 09時25分 公開
[臼北信行ITmedia]

我々はイチローを必要としている

 2年前のことだ。マーリンズに移籍後、初めてのスプリングトレーニング(春季キャンプ)では中盤に入ってから巨大な専用コンテナを球団側の許可を得て敷地内に設置。鳥取市のトレーニング研究施設「ワールドウィング」の代表を務める小山裕史氏が開発した初動負荷トレーニングマシンをコンテナの中に置き、そこを専用トレーニングルームに。キャンプのメニューを終えた後は、そこで1人黙々と汗を流していた。その当時のイチローは41歳。もちろんこの時でもチーム最年長だ。

 ベテラン選手ならば特権を生かして、通常メニューどころか自分のペースで練習を切り上げ、宿舎に引き上げても不思議ではない。しかしイチローは違った。新天地でも飽くなき努力を貫き、人一倍に体を研ぎ澄ませようとするレジェンドにマーリンズの若い選手たちが驚きながらも尊敬の眼差しを向けていたことが思い起こされる。

 今季でメジャー17年目。日本のオリックス・ブルーウェーブ在籍時代から通算すれば実に26年目だ。なぜ、まだイチローはグラウンドに立ち続けているのか。かつて同時期にメジャーでプレーしていた1つ年下の松井秀喜氏は5年前に引退した。一方のイチローは衰えが見られても、まだ随所で健在ぶりを見せ付けながらメジャーリーガーとして活躍している。マッティングリー監督は「これは個人的な見解だが」と前置きし、こう続けた。

 「イチローが年齢を重ねても現役生活を続けているのは、おそらく非常にシンプルな理由だろう。我々がイチローを必要としているからだ。そして、その要求に彼はしっかりと全力で応えようとしてくれる。それを今も可能にしてしまう彼こそ真のプロフェッショナルプレーヤーだ。この図式がある限り、イチローは今後も現役を続けていくと思う」

 必要とされているチームのために、そこで全力を尽くす。確かに至って単純なことかもしれないが、それを加齢にも屈することなくこなそうとするところがイチローのすごさなのだろう。

 加えて言うならば、これだけ数々の大偉業を成し遂げながら今もなおモチベーションを保ち続け“燃え尽き症候群”にならない点も常人とは違うところだ。

 そんなイチローに「晩節を汚さないためにも辞めたほうがいい」と提言する記事をネット上で目にした。いろいろな意見があるのは当然だと思うが、この論調には個人的に共感できない。マッティングリー監督は決してリップサービスではなくイチローのプレーを今も高く評価しているし、クリスチャン・イエリッチ外野手やディー・ゴードン内野手らレギュラークラスの若いチームメートたちも「レジェンド=イチロー」として常にその背中を追い続けている。

 もしかするとイチローは自分のプレースタイルや姿勢から若い選手たちに何かを感じ取ってもらい、教えを請いたいと希望するプレーヤーに対しては自らの遺伝子を植え付けようとしているのかもしれない。それを現在も現役を続ける上でのモチベーションとしているならば、とても素晴らしいことだと思う。

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