内燃機関の全廃は欧州の責任逃れだ!池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2017年08月21日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 欧州の主要国で、内燃機関の禁止に関する長期的展望が示されたことで、ちまたでは既に「ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも無くなって電気自動車の時代が来る」という見方が盛んにされている。「エンジンにこだわっていると日本はガラパゴス化する」という意見も散見する。その受け取り方は素直すぎる。これは欧州の自動車メーカーが都合の悪いことから目を反らそうとしている、ある種のプロパガンダである。

 まず大前提の話から。欧州各国が内燃機関規制を言い出したのは、窒素酸化物(NOx)による大気汚染が限界に達しているからだ。ロンドンやパリの大気汚染はひどいありさまで、英国の報道では年に4万人の寿命が縮んでいるという。由々しき問題である。

 結論から先に言えば、そんなことになるのは、欧州製のディーゼルエンジンがインチキだからだ。もちろんすべての自動車メーカーが黒確定とは言わないが、逆に疑惑をかけれられていないメーカーはあまり無い。

欧州各国の大気汚染を引き起こした責任は重い 欧州各国の大気汚染を引き起こした責任は重い

 ディーゼルエンジンではNOxが出るのはなぜかと言えば、それは空気に対して燃料が薄く、燃焼温度が高いからだ。ディーゼルエンジンは、圧縮されて高温になった空気が押し込められた燃焼室に直接燃料を噴射し、燃料の自己着火によって燃やす仕組みだ。燃料が自己着火するほど空気は高温になっているのである。

 この場合、高温にさらされた燃料は酸素に触れた途端燃え始めるため、噴射ノズルの側では酸素に対して燃料が過多になる。その結果、部分的な酸素不足で燃料が不完全燃焼してくすぶり、煤(すす)を出すのだ。一般的に煤は後でフィルターで漉し取り、フィルターが詰まってきたら、燃料を濃く吹いてフィルターの煤を焼いて飛ばす。この機能が働かないモード、つまり短距離使用ばかりを繰り返していると煤詰まりの問題が発生する。

 一方、燃焼室内の噴射口から遠いところでは十分に燃料が届かないうちに噴射口周辺の燃焼を受けて燃焼室全体の温度が上がる。その熱エネルギ−によって空気中の窒素が酸素と化合してNOxになる。酸素の化合数は状況によってまちまちで、Nの数もOの数も違う順列組み合わせがあり、数が不定なので数字の代わりにxを使う。

 これを防止するためには段階を追った方法がある。第1に燃料の噴射圧力を上げて噴射速度を上げ、末端まで早く届くようにする。第2に噴射口を多孔にして、いろいろな方面に向けて飛ばす。第3に吸気ポートやピストントップの形状を工夫して縦渦(タンブル)を起こす。

 ここまでの3つは、燃料と空気をいかに均等に混ぜるかというトライだ。第4は少し考え方が違う。吸気に排気ガスを意図的に混入(EGR:排気再循環)させて燃焼温度を下げる。排気ガスはそのほとんどが二酸化炭素と窒素。つまり不活性ガスだ。不活性ガスを混ぜると燃焼温度は下がる。与えられる熱エネルギーが一定以下になれば窒素と酸素は化合しない。

 もう1つ、これは今のところマツダだけの技術だが、ディーゼルエンジンの圧縮比を下げることで燃焼温度を下げるという方法もある。この方法では排ガスの後処理の必要が無いほど燃焼そのものでNOxを制御できる。

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