インタビュー
» 2017年08月28日 08時00分 公開

商品提案をサポート:三越伊勢丹、売り場にAI導入の狙い

三越伊勢丹ホールディングスは、フクロウの形をした小型AIロボット「ZUKKU(ズック)」をデジタルトイのイベントで試験導入。客の属性を判別し、適切な商品を提案するロボットだ。対面接客を向上させるためのAI活用を加速させる。

[加納由希絵,ITmedia]

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、人工知能(AI)の活用を加速している。8月中旬に伊勢丹新宿本店で開催したイベントで、フクロウの姿をした小型ロボットを試験導入。カメラとセンサーで来店客の属性を検知し、適切な商品情報を表示する実証実験を行った。手厚い接客サービスを提供する百貨店で、AIが「買い物体験」の価値をより高める役割を担う。

photo フクロウの形をした小型AIロボット「ZUKKU」。伊勢丹新宿本店で開催されたイベントで、客の属性に合った商品を紹介した

属性に合った商品を提案

photo 「デジタルホビーフェス」の展示。テクノロジーに触れる体験ができる知育玩具などを集めた

 実証実験は、IoTデバイス開発のハタプロ(東京都港区)が開発した小型ロボット「ZUKKU(ズック)」を使って実施。8月9〜21日に開催した、子ども向けデジタルトイのイベント「デジタルホビーフェス」で、商品提案に活用した。

 手のひらに乗るサイズのロボットには、カメラやセンサー、スピーカー、マイクなどが内蔵。目の前にいる人の性別や年齢、人数、表情などを認識し、個人を特定できないテキストデータに変換した上でクラウド上のAIに送る。そのデータに応じて設定された商品情報や動画をタブレット端末などに配信することで、自動で商品提案をする。

 今回の実証実験では、モノづくりやプログラミングなどを体験できる8商品の情報を表示できるように設定。目の前にいる人の性別と年齢に応じて、最適な商品を紹介する動画を流した。

フクロウのロボットが会話のきっかけに

 ZUKKUは小さくかわいらしい見た目であることから、「足を止めて、手に取って見てくれる方が多く、好評だった」と、三越伊勢丹の新宿婦人・子供商品部バイヤーの西山裕慈氏は振り返る。ZUKKUによる商品提案を体験した後で、売り場のスタッフの詳しい説明を受ける、という流れができていたという。

 ハタプロ社長の伊澤諒太氏は「顧客分析によく使われるネットワークカメラとの違いは、顧客目線のロボットであるということ。買い物を楽しんでもらう付加価値も提供している」と説明する。来店客の属性を判別したり、データを収集したりする機能だけでなく、買い物の満足度を高めることも重視している。

 そういった機能が接客サービスを補完する。イベント会場で接客に当たった販売スタッフは、ZUKKUを見て「何だろう」と足を止めた客に対して、自然と会話を始めることができたという。AIによる商品提案を客と一緒に確認して、その商品を詳しく説明するだけでなく、類似商品の提案にもつながる効果があった。

photo 「デジタルホビーフェス」を訪れた親子向けに、ZUKKUを紹介した

AIのサポートで接客力高める

 今回の実証実験で収集したデータを分析し、品ぞろえや店舗レイアウト、商品の提案方法などの店舗戦略にどのように活用できるか検討する。今後の売り場への導入は未定だが、「データを蓄積して精度を上げるため、繰り返し使いたい」(西山氏)という。

 ハタプロは、ZUKKUの機能強化に向けて開発を進める。音声認識の精度を向上して対話機能を高めたり、カスタマイズ性の高さを生かして小売り以外の業種にも展開できるようにしたりと、活用の幅を広げる方針だ。伊澤氏は「フクロウの形をしているのは、人間の“パートナー”となるイメージだから。(『ドラえもん』に登場する小型ロボット)『ミニドラ』のように、サポートしてくれる存在になれば」と展望を語る。

 三越伊勢丹HDは、ファッション関連商品やワイン・日本酒の商品提案へのAI活用も進めている。接客サービスにAIを積極的に取り入れる目的の1つは「対面接客の魅力を高める」(西山氏)こと。膨大な商品情報を記憶したり、初めて話す客に合う商品を判別したりと、人の力だけでは難しい業務を補助することをAIに期待している。そのサポートを得て、接客サービスの質をさらに高める。

 店舗まで行かなくても買い物ができる手段が増えた。その中で百貨店の“買い物体験”を選んでもらうための取り組みを続けている。

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