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国内企業が続々参入「仮想通貨マイニング」とは?GMOの勝算は

» 2017年09月14日 13時21分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 仮想通貨のマイニング事業に、国内企業が続々と参入している。9月7日はGMOインターネットが、8日にはDMM.comがそれぞれ2018年の正式スタートを目指すと発表した。

 「ビットコイン」や「イーサリアム」などの仮想通貨は、ネットワーク上に分散・保持されるブロックチェーン(取引台帳)に全ての取引が記録されることで、正確さと信頼性を保っている。そのブロックチェーンへの記録・更新作業が「マイニング」(採掘)だ。ユーザー間で仮想通貨のやりとりが行われるたびに、マイニングが必要となる。

 マイニングは、取引データの固まり(ブロック)を世界中の企業や個人ユーザーが計算し、最も早く計算に成功(承認)できたものに対して報酬の仮想通貨が支払われる(新規発行される)仕組みになっている。マイニングによって1日に1800ビットコイン(約8.5億円)が新規発行され、マイニングを行う「マイナー」の収入も上昇を続けている。高い計算力のある計算機(コンピュータ)があれば報酬を得られる確率が上がるため、市場の成長とともに計算の競争が激化している。

市場の成長と共に競争が激化している仮想通貨マイニング(=GMO発表資料)
マイニングの仕組み(=GMO発表資料)

 マイニング事業は現在、中国が6割以上のシェアを握っているといわれている。世界最大手のマイニングファームは北京のBitmain(ビットメイン)社だ。中国企業の強い競争力の要因となっているのは、中国の電気代の安さだ。仮想通貨マイニング事業の課題となっているのは、マイニングに高性能な計算機(コンピュータ)が必要なため、大量に電力を消耗すること。電気代のコストが重いほか、地球環境への影響も指摘されている。

最新チップとデータセンターで強い競争力を

 こうした競争激化と課題がある中で、GMOインターネットは(1)自社で行うマイニング、(2)共同でマイニングを行う個人ユーザーが参加できるクラウドマイニングサービスの提供、(3)個人ユーザーが自身のPCでマイニングを行うためのチップ販売――を新たに開始する。

 (1)については12月にテストを開始し、正式スタートは18年春を見込む。事業の安定に従って(2)(3)も順次展開していく。クラウドマイニングサービスは、提供(契約)した計算力に応じて収益を分配する仕組みを予定しており、価格は未定。

GMOのマイニング事業(=GMO発表資料)

 14日の発表会で、GMOインターネットの熊谷正寿社長は「旧財閥グループは自ら金銀の鉱山を掘ることで経営母体を確立した。その一方で、ゴールドラッシュの時に潤ったのは周辺事業者だった。GMOは自らマイニングするとともに、クラウドサービスやチップ販売を行う、いわば“両建て”で行う」と事業を説明した。自ら金を掘ると同時につるはしも売る作戦だ。

GMOインターネットの熊谷正寿社長

 世界の企業が先行する中でGMOの武器は、約100億円を投資した次世代のマイニングチップを搭載したボードと北欧のデータセンターだ。参入を発表したのは、チップとボードの開発にめどがつき、データセンターに適した場所が見つかったからだという。

 低電力で動くマイニング用の最先端半導体チップを国内メーカーと共同開発。年明けにも試作品が完成するという。

 さらに、データセンターを電気代の安い北欧の寒冷地に構築することで、再生可能エネルギーによる電気で安くマイニングを行い、コストと環境負荷を減らすとともに、コンピュータの冷却効率も上げるという。また、これまでネット事業で培ってきた数万台の物理サーバ運用・管理のノウハウも生かす。電気代は日本の約3分の1ほどに抑えられるという。

 「最大手の中国ビットメイン社は、優秀なチップを開発し、高性能なマイニングマシンを作ったことで、高いシェアを獲得した。マイニングで勝つためにはチップマシンから開発をしないといけない。逆に言えば、高性能で大量の計算機を、少ない消費電力で扱うことができれば、強い競争力と優位性になる。また、半減期(マイニング報酬が半分になる)のリスク管理にもなる」(熊谷社長)

 熊谷社長は発表会の最後に「仮想通貨には、インターネットと巡り合った時と同じワクワクを感じている。インターネットは情報をフラットにしたが、仮想通貨はお金のやりとりをフラットにし、経済と世の中を変える可能性がある。インターネットの黎明期と同様の流れが仮想業界にも起こっており、既視感がある」と仮想通貨事業の魅力と展望を語った。

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