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» 2017年12月05日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:なぜ日本のおじさんは、貴乃花親方にイラついてしまうのか (4/5)

[窪田順生,ITmedia]

最大の原因は、日本の伝統的なハラスメント文化

本連載の筆者、窪田順生氏の最新刊『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)

 しかも、相撲協会という組織は特に「暴行」に甘い。新弟子が兄弟子たちのリンチで殺された2007年の事件以降も「殴られるようなことをする者が悪い」というカルチャーがいまだに現場にまん延しているのだ。

 それを象徴するのが、2011年10月に発覚した、春日野親方の暴行だ。リンチ殺人からまだ3年ほどしか経過していないにもかかわらず、親方が3人の弟子をゴルフクラブが折れるほど殴ったのである。

 しかし、これを警察も事件性なしと判断をした。なぜかというと被害者側が、「自分たちが悪い。訴える気はありません」と述べたからだ。

 『3人は何度も相撲協会の規則である着物や浴衣ではない服装で外出したり、門限を破ったため、春日野親方が激怒』(スポーツニッポン 2011年10月19日)

 つまり、日馬富士が会見で述べたような、礼節を教えるための「指導」だったのでセーフというわけだ。実際、春日野親方は相撲協会から厳重注意を受けただけで、2016年には理事に当選。今回の巡業では、貴乃花親方に代わって、巡業部長を務めている。

 日馬富士と伊勢ケ濱親方の引退会見が、「悪いことをしたという感じが伝わってこなかった」と批判を浴びたが、ああなってしまうのもしょうがない。ゴルフクラブという殺人の凶器になりえるようなもので殴った人がおとがめなしで理事になれたのに、カラオケのリモコンで「しつけ」をしただけで、ここまで大事になって引退に追い込まれなくてはいけないのだという「不公平感」があるのだ。

 ただ、一般社会では、どういう理由があれ、上司が部下を酒の席で、説教の末にボコボコにしたら人生の破滅だ。それは、格闘技の世界でも同じだ。

 にもかかわらず、テレビなどのメディアには「相撲のような荒っぽい世界で、態度の悪い若者を力でねじ伏せる“指導”があるのはしょうがない」なんてことを言い出す「おじさん」がまだちょいちょいいる。

 この最大の原因は、日本の伝統的なハラスメント文化だ。

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