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» 2017年12月05日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:なぜ日本のおじさんは、貴乃花親方にイラついてしまうのか (5/5)

[窪田順生,ITmedia]
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戦いはどちらに軍配があがるのか

 電通のパワハラ問題に関する記事のときに詳しく考察したが、「最近の若いやつは根性が足りん」とか説教するおじさんたちというのは、パワハラ的な厳しい指導や、心身ともに追い込まれるような長時間労働を経験してはじめて、人は成長できるという思い込みがある。(関連記事)。なぜかというと、自分がそのような経験をしてきたからだ。

 このようにパワハラが世代から世代に引き継がれていく連鎖の構造をたどっていくと、旧日本軍に突きあたる。実は意外かもしれないが、旧日本軍は規律を重んじ、私的制裁は禁じというおふれが何度も出ていた。しかし、その裏で「新兵いじめ」のような陰湿な暴力が横行していた。

 なぜ撲滅できなかったのかというと、強者が弱者を力でねじ伏せるという構造が、上の命令は絶対服従という軍隊型の組織のガバナンスに、非常にうまくフィットしたからだ。

 電通、ユニクロ、ヤマト運輸という厳しい生存競争を勝ち抜く大企業や、ピラミッド社会をのしあがる力士の世界でパワハラがまん延してしまうのも同じ理由である。こういう「パワハラ社会」のなかでうまくたちまわり、成功を手にしたおじさん世代の人たちは、日馬富士に自分の姿を投影し、同情して応援をする。そしてこの社会の秩序を乱す貴乃花親方に牙をむくのだ。

 鳥取県警からは「貴ノ岩が頭から出血するまで周囲が止めなかった」(NNNニュース 12月4日)なんて情報も漏れてきている。いずれ明らかになるが、貴ノ岩に対する私的制裁である可能性が極めて高い。

 しかし、鉄拳制裁で生意気な若造をねじ伏せるのはこの社会には必要だと信じるおじさんたちも黙ってやられるわけにはいかないだろう。全力で、貴乃花親方を潰しにかかるはずだ。

 旧日本軍の陰湿な新兵いじめや私的制裁の実態が明らかになったのは、戦争が終わってしばらくしてからのことである。

 そう考えると、今回の「リンチ」の真相が明らかになるのは、まだまだ先のことではないだろうか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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