「忖度御膳」空振りのうわさから考える、ファミマの“迷い”“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

» 2017年12月20日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 ファミリーマートは12月1日、話題となったキーワードを盛り込んだ数量限定の和風弁当「忖度(そんたく)御前」の販売を開始した。価格は同社が販売した弁当としては最も高額の798円(税込)に設定した。なかなか凝った作りになっており、弁当に入っている9種類の食材と忖度に関連した言葉を結び付け、文章になるよう工夫されている。

 例えば「この案件、うまくいくとめでたいです」という部分は「案件」を「あんかけ」に、「うまく」を「うま煮」に、「めでたい」を「金目鯛」にかけている。「腹黒くはありませんがマメにお会いして」というくだりでは、「腹黒く」は「のどぐろ」に、「マメ」は「枝豆」となっている。

 弁当箱は9つのブロックに分けられており、このうち3つには御飯が、6つにはおかずが盛られており、コンビニ弁当としてはなかなか豪華な作りだ。

photo ファミリーマートの「忖度御膳」

 忖度御膳は11月21日から予約を開始し、12月1日に店頭での販売が始まったが、その直後から、ネット上では「売れていない」という声が多く聞かれるようになった。真偽の程は不明だが、ある店舗ではほとんどの商品が廃棄されたとのツイートもあった。

 売れ行きが良くないことが本当なのだとすると、一体、何が原因なのだろうか。一部からは「政治家を揶揄(やゆ)した企画内容が不快感を呼んだ」との意見もあったが、それが理由とは考えにくい。政治に強い関心を持ち、感情を移入する人はそれほど多くないのが実情であり、商品が売れないケースの大半は、消費者ニーズとのミスマッチである。

 ネットでよく目にしたのは「メニューが高齢者向け」という指摘である。確かに使っている食材を考えると、弁当そのものは中高年をターゲットにしたものに思えるし、798円という価格設定もそれを裏付けている。若年層は中高年ほどお金が自由にならないので、おいそれと800円の弁当を買うことはできないだろう。やはり財布に余裕のある高齢者が主な顧客層と考えた方が自然だ。

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