インタビュー
» 2017年12月27日 07時00分 公開

カギになるのは「朝読」「郊外」:朝読需要で20万部突破。児童書「5分シリーズ」誕生秘話 (1/3)

河出書房新社×エブリスタの児童書「5分シリーズ」がシリーズ累計20万部のヒット。カギになったのは「朝読需要」と「郊外の少年少女」? 河出書房新社とエブリスタに聞いた。

[青柳美帆子,ITmedia]

 「5分後に涙のラスト」「5分後に驚愕のどんでん返し」「5分後に戦慄のラスト」――5分後に衝撃の展開が待っている「5分シリーズ」が売れている。版元は河出書房新社だが、もともとはWeb小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿された短編小説で、著者はほとんどが新人。それなのにシリーズ累計で20万部を突破するヒット本となっている。

 「5分シリーズ」は200ページほどの短編集だ。1冊につき10本程度の短編が収められており、それぞれの短編が5分ほどで読めるのが売り。「涙」「心にしみる」といった感動系のものから、「戦慄」「後味が悪い」といった毒のあるストーリーまで、テーマ別に現在7冊が刊行されている。

河出書房新社×エブリスタのタッグで生まれた「5分シリーズ」が売れている

 シリーズのメイン読者は小中高生。Web掲載時は特に年齢層を絞ってはいなかったが、河出書房新社はこの本を「児童書」として刊行した。「朝読」需要も後押しし、少子化にも負けずに大ヒットシリーズになった「5分シリーズ」。どこがいまの子どもたちにウケたのか? シリーズを立ち上げたエブリスタ(ディー・エヌ・エー子会社)の松田昌子さんと、河出書房新社の営業担当であり、本シリーズの書籍化を提案した鎌塚亮さんに話を聞いた。

Web発の短編小説が、河出で「10代向けの読み物」になった

――「5分シリーズ」がシリーズ累計で20万部突破と非常に好調です。このシリーズはどのように生まれたのでしょうか。

松田: もとは、エブリスタが定期的に開催している短編小説のコンテスト「超・妄想コンテスト」の投稿作です。非常にクオリティーの高いものが投稿されるようになったので、書籍の形でまとめたいなと思い昨秋立ち上げたレーベルが「5分シリーズ」です。電子書籍の販売とともに、提携しているイベント「文学フリマ」でも同人誌としてみたところ……いきなり河出の営業マンである鎌塚さんから声がかかったんです。

鎌塚: 同人誌版を手に取ったとき、「これは書店や学校図書館が求めている『10代向けの読み物』だ!」と思いました。表紙のイメージや作品内容の質感はもちろん、10代に「1冊を読み終えた成功体験」「いつの間にか読み終わってしまったという爽快感」を与えられる作品で、若い読者にとっての読書の入り口になるはずだと。

 「5分後に大きな展開が待っている」――つまり5分間で読めるというのもいいですよね。いま小中学校では読書推進運動の「朝の読書(朝読)」という試みが行われています。そうした朝読需要に応えたショートショート本が他社でもウケています。その上でエブリスタさんのシリーズは非常に“今風”にアップデートされていて、そこもすごく魅力的でした。

松田: 同人誌版から、パッケージのイラスト・デザインは思い切って第一線で活動しているクリエイターチームにお願いしました。一方で書き手はあくまで無名の新人なので、「5分で泣ける」「5分で後味が悪い」と中身を説明することで、読者に対して内容をきっちり伝えています。その本としてのパッケージングが河出さんにも読者にも響いたのかな、と思います。ただし想定読者は20〜30代のやや女性寄りを想定していました。だから「児童書で刊行したいです」と聞いたときは「大丈夫ですか? 本当にいいの?」。感動的な話だけではなく、かなり毒の強い話もあるので……。

鎌塚: そこは「ものすごく大丈夫です!」と伝えました(笑)。「学校で読む」「10代向け」といっても、お行儀のいいものにする必要はない。10代は面白くて刺激的でワクワクするものは必ず読む。ルビや校正といったチューニングは行いましたが、トガった部分は極力残すようにしました。

エブリスタ松田さん、河出書房新社鎌塚さん

書店と学校から大反響。「5分シリーズ」はこう売れた

――書籍化の反響について教えてください。

鎌塚: 書店さんに案内をしたところ、とても高いテンションで応援をいただきました。そこで「我々も思い切り力を入れよう」と改めて気合いが入りましたね。初めてのシリーズにしては極めて異例な「3点それぞれ1万8000部」という部数を用意して今年の4月15日に第1弾を刊行しました。児童書は一般的に初版4000〜6000部ですから、初シリーズとしてはかなり多い。「ロングで売れる」というのが児童書の特徴なので、最初に多めに刷ったということはあるのですが、それでもかなりの挑戦でした。

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