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» 2018年01月02日 06時00分 公開

河野社長が目指す高み:アパレルの常識を変えた熊本発ベンチャー、シタテルの信念 (1/3)

デザイナーと縫製工場をつなぎアパレル業界の課題を解決する――そんなサービスを提供するのが熊本発のベンチャー企業、シタテルだ。河野秀和社長が同社のイノベーションについて語った。

[伏見学,ITmedia]

 「自分が考えた服を商品として作りたい」。どんなファッションデザイナーであれ、そうした願望を持っているだろう。特に駆け出しのデザイナーはその思いが強いはずだ。

 ただし、それを実現するためにはハードルが高い。基本的には縫製工場に依頼するわけだが、数百枚、数千枚といったある程度の大ロットでなければ、どうしても1枚あたりの製作単価は高くなる。また、縫製工場も1カ所だけでは依頼できることは限定的になるため、複数工場への発注が必要だ。大手アパレル企業ならいざ知らず、個人のデザイナーにとってそうした費用負担は軽視できない。そうかと言って、大規模に発注するのもリスクが大きい。

 小ロットかつ低価格でさまざまな縫製工場に依頼できない――。これがアパレル業界のボトルネックになっていた。そうした状況によって、本当はいろいろとアイデアを形にしたいのに、費用面などからそれができないと嘆くデザイナーは少なくなかった。また、消費者のニーズが急激に変化する中、ファストファッションに代表されるように、次々と新しい服を商品化する必要性が出てきている。今や大手アパレルでも小ロットで服を作ることが当たり前になっているが、それに即座に対応できる縫製工場が見つからないという声も上がっている。

デザイナーと縫製工場の双方が課題を抱えていた デザイナーと縫製工場の双方が課題を抱えていた

 かたや、縫製工場にも深刻な課題があった。国内の縫製工場は中小・零細企業が多く、自らが顧客の需要を拾い上げて、営業をかけることがほとんどできていなかった。また、仮に大ロットの受注があっても、それが安定的に続く保証はなかった。当然、経営はどんどん厳しい状況に追い込まれていき、現場の危機感は強まるばかりだった。

 この双方の悩みを解決することはできないのか。それを可能にしようと、アパレルの産業構造に風穴を開けたのが、2014年創業の熊本発ベンチャー、シタテルの河野秀和社長だ。

 河野社長はメーカーや外資系金融機関で働いた後、地元である熊本でビジネス支援などを手掛ける会社を設立。そこでの経験や実績がシタテルの原点になっている。

 シタテルのビジネスモデルはいたってシンプルで、デザイナーと全国の縫製工場をマッチングするプラットフォーム「sitateru」を提供。さまざまなアパレル事業者が自社の商品に合う縫製工場を探す手間なく、ワンストップで衣服を生産できるアパレル業界向けのクラウドソーシングといった具合だ。今では個人規模のブランドにとどまらず、大手アパレルブランドもsitateruを利用する。現在、サービスに登録する企業は5000社で、半数の約2500社がアクティブユーザーだ。連携する縫製工場は350を超えた。

 同社のサービスを使えば、1型50枚を最低ロットとしてオーダーできる。なぜ小ロットでも発注できるのかというと、繁忙期の縫製工場と閑散期の縫製工場のリソースをうまく調整しているからだ。シタテルの事業を本格的に始める前、河野社長がデザイナーからデニムを20〜30本作りたいという依頼を受けて、ある縫製工場に打診したところ、ちょうど閑散期ですぐに作ってもらえた経験が発想のベースにある。

 「最初からアパレル業界で起業しようと決めていたわけではありません。もちろんファッションそのものには興味がありましたよ。ただ、いろいろな産業を分析したところ、特にアパレルの産業構造がいびつだと分かったのです。服を作りたい人がもっと自由に作れるようになればいいのにと思いましたし、業界関係者に聞くと、例えば、取引間同士は業務が最適化されていても、それが全体最適につながっていないという状況もありました。こうしたことを何とかしたいという思いでシタテルを立ち上げました」(河野社長)

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