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» 2018年04月06日 13時48分 公開

温かく見守って:串カツ田中が新卒だらけの店舗をオープン、狙いは?

串カツ田中が新入社員だらけの店舗をオープンさせる。未熟な接客を温かく見守ってもらうお礼としてドリンクを格安で提供する。接客の質をあえて落とすような決断をした理由とは?

[昆清徳,ITmedia]

 串カツ田中は4月11日、東京都中央区に「串カツ田中 小伝馬町研修センター店」(以下、研修センター店)をオープンさせる。従来の店舗と違い、経験豊かな店長と新入社員だけで営業する。オープン時に配属されるのは20人弱の新卒社員だ。1カ月研修センター店で技術を習得したのち、各地の店舗に配属される。同社は通年採用を実施しているので、定期的に研修センター店で働く新入社員が入れ替わる。

 提供する商品は他の店舗とほぼ同じだが、「(社員の)成長を温かく見守っていただく感謝の気持ち」として、通常店では399円(税抜、以下同)の生ビールや370円の角ハイボールなどを200円で提供するという。

 串カツ田中がわざわざ接客の質を落とすような店舗をオープンさせる狙いはどこにあるのだろうか。

photo 「串カツ田中 小伝馬町研修センター店」の外観

 研修センター店に新入社員をまとめて配属するのは、効率的に実務を習得させるためだ。これまでの新入社員向け研修は3日間の座学が中心で、実務指導は配属先の店舗で行われていた。しかし、これでは指導者によって学べる内容にばらつきが出てしまう。指導力の高い店長から学ぶことでより早く即戦力になれるという。

 もう1つの目的は離職率の低下だ。研修センター店には熟練の店長とは別に「研修センター長」がおり、新入社員のフォローをする。「新入社員に『お兄さん』的な立ち位置で接してもらう」(広報担当者)ためだ。

 これまで、新入社員は配属先の店舗で「アルバイトより仕事ができない」「自信が持てない」といった悩みを抱えることが多かったという。研修センター長は研修後も新入社員と連絡をとってさまざまなフォローをする。さらに、1カ月間、同じ職場で新入社員が働くことで同期意識が醸成される。本配属後、新入社員が孤立しないための工夫だ。

 串カツ田中が導入した制度は一般的に「メンター制度」と呼ばれている。新入社員と比較的年齢が近い先輩社員がさまざまな相談に乗ることで、会社に早く馴染めるようにする。結果的に新入社員の早期離職が防止できる。今回、研修センター長に就任した石川一希氏は「今まで以上にスタッフのコミュニケーションを大事にしていきたい」と意気込んでいる。

photo 研修センター長の石川一希氏

 ここまで手取り足取りの指導をする背景にあるのは、串カツ田中が30%という離職率(※)を何としても改善したいと考えているからだ。同社は全国1000店舗体制を目指しているが、18年4月段階で183店にとどまる。新規出店を継続するには人材の定着が不可欠だ。※:離職率の計算式は「新卒・中途社員を含む期中退職者数÷(期首在籍者数+期中入社人数)」。集計期間は毎年12月1日〜翌年11月30日

 飲食業界は深刻な人手不足に苦しんでいる。18年1月に厚生労働省が発表した有効求人倍率は1.59倍だが、飲食業の「接客・給仕」分野では4.29倍に跳ね上がる。空前の売り手市場で人材をつなぎとめるには、従業員を大事にしている姿勢を目に見える形で示す必要がある。飲食業界では今後、こういった動きが加速していくだろう。

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