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» 2018年04月06日 19時16分 公開

「総量抑制」だけでは不十分:3年ぶりの宅配便減少 ヤマトに求められる「働き方改革」

3年ぶりに宅配便取扱個数を減少させたヤマト。だが、抜本的な課題である「人手不足解消」には更なる「働き方改革」の実行が求められる。

[今野大一,ITmedia]

 宅配便最大手のヤマト運輸は5日、2017年度の宅配便取扱個数が前年度と比べて1.7%減の18億3668万個だったと発表した。減少は3年ぶりで、値上げによって取扱個数の総量抑制をしてきた結果が出たとみられる。「法人のお客様に色々とご協力いただいたおかげで3年ぶりに減少させることができた」(広報)。

 ネット通販大手のアマゾンジャパンが4日の注文分から配送料を最大で5割値上げした。アマゾンは今年1月にヤマトの値上げ要請に応じており、アマゾン利用者からの値上げの一部をヤマトに支払う運賃に転嫁しているとみられる。

 値上げ要請の背景にあるのが、宅配ドライバーの深刻な人手不足だ。取扱個数が爆発的に増え、薄利多売の従来のビジネスモデルは限界にきている。そこで喫緊の課題となるのが、ドライバーの待遇改善を初めとした「働き方改革」だ。同社は中期経営計画においても「働き方改革」を経営の中心に据えている。

phot 中期経営計画の全体像

「人手不足」を乗り越えるために

 ヤマトではドライバーの違法な長時間労働が問題になっていた。その対策として昨年6月には、正午〜午後2時の間の配達を廃止して昼休憩を取得しやすくした他、午後8〜9時の時間指定を午後7〜9時に緩和するなど、ドライバーの勤務時間に余裕を持たせている。また、従業員の満足度を高めるため、昨年はヤマト運輸の長尾裕社長が全国10支社に直接足を運び、現場のドライバーやパートタイム社員と労働環境などについて語り合う機会も設けたという。「待遇については相当改善されたという社員の声を多く聞くようになった」(広報)。

 今後は「アンカーキャスト」と呼ばれる夜間に特化したドライバーを新たに確保していくという。ネット通販など小口荷物の宅配はどうしても夜間に集中してしまうためだ。19年度までに1万人を確保する予定で、人口が密集している地域に限定して導入する。従来は一人のドライバーが朝から夜間まで連続して荷物を配達していたが、導入後は朝から夕方までの勤務のドライバーと、夕方から夜間まで勤務のドライバーに分けることができ、長時間労働の是正につながる。すでに一部の地域で試行運用が始まっているという。 

 加えて、今年5月には有期労働契約社員の無期契約への転換制度も導入予定だ。勤続3年以上で、一定の評価を得た有期労働契約社員を無期契約に切り替え、ステップアップさせる。今後も社員が働きやすい環境を整備できるかが、人手不足を乗り越えるカギとなりそうだ。

テクノロジーの力も後押し

 ドライバーの負担軽減を後押しするのがコミュニケーションアプリ「LINE」の公式アカウントや宅配ロッカー「PUDOステーション」などだ。LINEアプリではLINEのトークルーム上で再配達の依頼や受け取り日時の変更もできる。同社が発行するクロネコメンバーズとの連携も進んでおり、利用者が荷物を便利に受け取れるだけでなく、ドライバーにとっては再配達の負担軽減につながる。

phot ヤマトの公式LINEアカウント

 同社がフランスの会社と立ち上げた合弁会社が手掛ける宅配ロッカー「PUDOステーション」の設置も加速している。18年度は日本全国で約3000台を目標に設置を進めた。同社の広報は「個数が増えてきたことで、認知度も上がっている。これまではコンビニやマンションのロッカーでの設置が中心だったが、エキナカやスーパーの前など、お客さまの通勤動線に置けるようにもなってきた。利用者は着実に増加している」という。今後も、自宅外での受け取り比率を向上させていく。

phot PUDOステーションは関東を中心として設置が進んでいる

 ネット通販の市場は今後も拡大するため、ドライバーの人手不足は今後も続いていくとみられる。荷物の総量抑制だけでは抜本的な解決は望めず、「働き方改革」をはじめとして、テクノロジーやITへの投資なども通じて、さらなる労働環境の改善がヤマトに求められている。

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