ホテルでロボットが”おもてなし” サイバーエージェント、石黒教授らと実証実験広告媒体としての活用も

» 2018年04月18日 18時50分 公開
[中澤彩奈ITmedia]

 サイバーエージェントは4月18日、大阪大学基礎工学研究科の石黒浩教授と東急不動産ホールディングスと共同で実施した、ホテルで人型ロボットを活用した実証実験の結果を発表した。ホテルというプライベートな空間の中で、ロボットとのコミュニケーションが人に与える威圧感などを調査した。

phot 「CommU」と「Sota」

 実証実験では、ロボットメーカーのヴイストン(大阪市)が提供する卓上型対話ロボット「CommU(コミュー)」と「Sota(ソータ)」を活用。高さ30センチ程度の可愛らしいロボットだ。

phot 実証実験のイメージ図

 これらのロボットをホテルの廊下とエレベーター前に設置。外部カメラで人を検知すると声掛けやあいさつ、情報提供などを行う。今回の実証実験では、この際のロボットとのコミュニケーションがホテル利用者に威圧感などを与えるかを調査した。

phot アンケート調査の結果は…

 検証の結果はおおむね高評価で、ロボットとの会話は好意的に受け入れられたという。石黒教授はロボットの形であるゆえに提供できるサービスがあるとし、「人は人との会話でプレッシャーや威圧感を感じてしまうことがある。ロボットが相手だとそれらを軽減でき、よりスムーズな接客が可能になる」と、ホテルの接客でロボットを活用するメリットを語った。

 ロボットの活用については接客の補佐だけではなく、新しい広告媒体としても検討している。例えば、ロボットとのコミュニケーションを通じてホテルの近くにあるレストランなどを紹介するといった形だ。人から情報提供されるより押しつけがましさがないという。

 サイバーエージェントの内藤貴仁上級執行役員は「今の広告ビジネスでは米国の企業が支配的。情報をローカライズし発信する技術を高めることで競争力を高めたい」と意気込んだ。

 石黒教授は、現時点でのロボットは簡単な会話しかできず、実用化・商用化の見通しは立てられないとしつつ、「今後はディープラーニングや画像認証技術などの研究をさらに進め、ロボットとより深いコミュニケーションができるようにしていきたい」と展望を語った。

phot 左からサイバーエージェントの内藤貴仁上級執行役員、大阪大学の石黒教授、東急不動産R&Dセンターの山内智孝副センター長

 同プロジェクトはサービス業における人材不足やインバウンド需要の増加を受け、丁寧な接客ができるだけではなく新たな広告媒体にもなるロボットの開発を目的として発足した。

phot 石黒教授

 石黒教授は、自身にそっくりなコピーロボット”ジェミノイド”など、数多くのロボット開発に携わってきたロボット研究者として知られる。インタラクションという日常活動型ロボットにおける課題を世界に先駆けて提案し、研究に取り組んできた。

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