変化と不変の両立に挑んだクラウン池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2018年07月23日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 トヨタの看板車種の筆頭であるクラウンがフルモデルチェンジした。筆者もすでにクローズドコース試乗で高負荷域の「クラウン離れした」仕上がりを体験し、その激変ぶりをインプレッションに書いたが、今回改めて一般公道での試乗会が開催された。クラウンの立ち位置を考えれば、クルマとしての真価が分かるのはこちらだ。

 さて、おさらいのようになるかもしれないが、セダンを巡る状況と、試乗会を2度に分けたトヨタの意図あたりから書き始めてみよう。

15代目クラウンは新時代のセダンの復権を目指す 15代目クラウンは新時代のセダンの復権を目指す

守勢に追い込まれたセダン

 現在、世界的にセダンが不調である。かつてセダンは自動車の中心カテゴリーであり、走行性能とパッケージの最良のバランスポイントのひとつであったが、自動車の多様化が進んだ結果、これまで「いろいろな用途を1台でこなせる」万能性が高く評価されてきたセダンの魅力そのものが、コインの裏側から見られることが増えた。八方美人で中途半端な印象になり、マーケットで不利をかこつようになっている。

 言うまでもなく、広さを求めるならミニバンが圧倒的に有利だ。それは460〜690万円のクラウンと価格帯がおおよそかぶる335万円〜751万円のアルファード/ヴェルファイアのバカ売れぶりを見ればよく分かる。あるいは、運動性能を求めるならスポーツカーやGTが有利。と言ってもこちらは爆発的には売れるものではないが、いずれにせよ餅は餅屋で、よりベターなモデルがあり、結果としてセダンは二兎を追うものに見えてしまっているわけだ。

 しかも現在、グローバルにはクルマが増え過ぎ、道路が慢性的に渋滞している。特に歴史的に高速長距離移動を是としてきた欧州の速度低下が著しく、アウトバーンですら時速200キロでの長時間巡航なんて芸当は不可能になってきたのである。こういう超高速を割り切ってしまえば、多少重かろうが重心が高かろうがなんとかなる。むしろ渋滞の中を這いずり回る時には、圧迫感と無縁なミニバンのメリットが光ってくるのだ。

 速度の取り締まりが厳しい米国や、元々超高速は法的にも交通実態的にも使えない日本では、80年代からクライスラー・ボイジャーや日産プレーリーでミニバンムーブメントがスタートした。その後、日本はミニバンの花盛りを迎える。90年代中期にはトヨタ・タウンエースノアや日産バネットセレナ、ホンダ・ステップワゴンなどが加わって、「セダンよりミニバン」という潮流が定着した。

 しかもセダンの受難はそれだけではなかった。「少しスポーティな実用車」のニューカマーとしてSUVのマーケットが確立されると、セダンはミニバンとSUVに挟み撃ちに遭ってしまった。その流れは現在進行形で欧州に転移しており、セダンはどんどん住処を追い立てられているのだ。

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