そしてもう一つ、サマータイムのデメリットとして指摘されている「睡眠不足が与える影響」についても触れておきます。
過労死が長時間労働による突然死であることは、みなさんもご存じの通りですが、実は睡眠不足がその危険度をより高めることが国内外の調査で分かってきました。
ある調査によると、
ということが分かりました。(Liu Y, Tanaka H, The Fukuoka Heart Study Group, 2002, “Overtime Work, Insufficient Sleep, and Risk of Non-fatal Acute Myocardial Infarction in Japanese Men”Occup Environ Med, 59, 447-451)
それだけではありません。睡眠時間が6時間未満だと狭心症や心筋梗塞の有病率が上昇、5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が上昇。4時間以下になると、冠動脈性心疾患による死亡率が、睡眠時間7時間以上8時間未満の人の約2倍になるという報告もされています(平成16年度版「厚生労働白書」)。
つまり、「時差ボケになるかもしれないサマータイム」「残業が増えるかもしれないサマータイム」「睡眠不足になるかもしれないサマータイム」など、サマータイムはデメリットが多すぎる制度です。
「オリンピックのため」にサマータイムを検討するくらいなら、北海道などの地方開催を検討するべき。
そして、今回のテーマからずれますが、働き方改革では「夜勤」のリスクももっと検討してほしいし、「暑さ対策で日本のイノベーションを世界に発信する機会だ」(by森会長)というのなら、デンマークで「看護師さんなどの交代制勤務をする人が乳がんを患った場合、労災が認められている」ことに負けないくらいの働き方改革にも取り組んでほしいです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)
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