子どもを持つのは国のため? 「3人以上産んで」発言に潜む“幻想”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)

» 2018年06月08日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

「何が問題なのか分からない」

「当たり前のことを言ってるだけ」

「国益を考えれば誰かが言わなきゃだろう」

「日本人は心が狭くなっている」

 などなど……。

 自民党の加藤寛治衆議院議員の「3人以上子どもを産んで」発言に、想像以上に肯定的な意見が出たのは少々驚きでした。

 ひょっとして「瞬間湯沸かし器的集団リンチ」に飽きた? そうかもしれません。

 ここ数年、「攻撃すべき相手」が見つかると一斉に石を投げ、「これでもか!」というくらいたたきまくり、テレビも連日連夜重大ニュースそっちのけで報道を続ける構図が繰り返されてきました。散々盛り上がっておいて「ごめんなさい」した途端、一瞬にしてジ・エンド。3日後には、事件があったことすら忘れ去られ、問題は何一つ解決されないまま置き去りにされてきました。

 私自身、かなりへきえきしていますが、今回の加藤氏の発言はスルーしちゃダメ。こういった発言が繰り返される理由を、批判する人も、肯定する人も、ちゃんと理解しておくべき問題だと考えているのです。

 というわけで今回は「発言の土台」についてお話しします。

photo 国会議員の「3人以上子どもを産んで」発言。その“土台”となっているものとは?

 まず、最初に加藤氏の発言内容を整理しておきましょう。5月10日に開かれた派閥会合で、「私は結婚式では『ぜひとも3人以上、子どもを産み育ててほしい』という話をする。努力しても子どもに恵まれない方に無理を言うのは酷だから、そういう方々のために必要なんですよ、と」と持論を展開しました。

 さらに、「披露宴で若いお嬢さんに『まもなく結婚するんですね』と話しかけると、たまに『しません』という方がいる」とも発言。その場合、加藤氏は女性に問いかけを続けるといい、「老人ホームは誰が運営しているか分かりますか」「若い方が働いて税金を納めて運営している」「子どもが生まれないと、人様の子どもの税金で老人ホームに行くことになる」とたたみかけるとも述べていました。

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