必殺・新人つぶし! ――裸になれない“小ジジイ”の壁新連載・河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)

» 2018年04月13日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

新連載・河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」:

 「ジジイ」とは、自分の“保身”のためだけに権力を使う人の象徴だ。ある世代を指しているわけではなく、男性だけに限っているわけでもない。若者にも女性にも「ジジイ」はいる。そんな人たちが、多様性を許さない不寛容な職場や社会を形作っている。健康社会学者の河合薫氏が、社会にはびこる「ジジイの壁」に切り込む。


 売り手市場を追い風に、念願の企業に就職。「よし! やってやるぞ!」と意気揚々としている新入社員を待ち受けるのが、“小ジジイ”の壁です。

 小ジジイたちは、「アレはこうした方がいい、ソレはこうしなきゃダメだ、コレは若手の仕事だからやっといて!」と、聞いてもないのに細かく指示したり、ダメ出ししたり、自分の仕事を押し付けます。

 しかもその言い方が鼻につくといいますか、上から目線といいますか、人を小ばかにした感じで。それでも仕事の役に立てばいいのですが、「教えて欲しい」と新入社員が困っているときには、素知らぬ顔。「自分でそれくらい考えろ」と突き放すので、新入社員のモチベーションは下がるばかりです。

photo 新入社員にストレスを与える“小ジジイ”の壁とは……

 “小ジジイ”は、2つのタイプに分けられます。

 1つは30歳前後の意識高い系に多く、同期入社の中ではどちらかといえば目立つ「意識タカスギ君」。

 彼は学生時代からNPOで働いたり、学生団体を立ち上げたりしていて、仲間意識が異常に強く、「人脈こそ命」と、Facebookの“お友だち作り”に必死で、Twitterのフォロワー数を競うのが大好き。好きな言葉は「起業・自立・自己責任」。会社や上司批判を頻繁にしているくせに、社内で一目置かれている社員には、子犬のように尻尾をフリフリさせてついていきます。

 もう1つのタイプが40代に多く生息する、「口だけ番長」です。

 「Excel」や「PowerPoint」もろくに使えないのに、「アジェンダ」「エビデンス」などのはやりの言葉を乱用し、調子に乗ると「昔は○○だった」「オレらのときは××だった」と、昔の武勇伝自慢が始まります。そのくせ都合が悪くなるとスルリと消えたり、気配を消したり。ナニをやっているのかよく分からないオジさんです。

 「意識タカスギ君」も「口だけ番長」も、決して悪い人たちではないのです。「アレコレソレ」エンジンがかかり出すと、自分の世界に突入し、“小ジジイ”に成り下がります。自分に酔いしれているのです。壁側が鏡の喫茶店などで、相手の顔よりその先の鏡に映る自分の姿に酔いしれる人がいますが、ちょうどそんな感じです。

 いずれせよ“小ジジイ”は、そこそこの大学を出て、そこそこの企業に勤めているため、社外の人たちからは「すごいな〜」「さすがだよね〜」と持ち上げられてきました。属性や肩書=自分、ではないのに、小ジジイはそれが「自分の評価」だと勘違いする。属性や肩書で生きるおめでたい人。

 そして、「自分より下(小ジジイの判断基準による)」と判断すると、小ばかにした態度を平然ととるのです。

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