ファーウェイのスマホは“危険”なのか 「5G」到来で増す中国の脅威世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2018年11月29日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

米国がファーウェイを「警戒」する理由

 まず、ファーウェイはその成り立ちも注目されている。ファーウェイが設立されたのは1987年。人民解放軍の通信部門研究を担う情報工学学校でトップを務めたこともある任正非によって、広東省深センに設立された。創業時、任は2500ドルしか持っていなかったというが、現在は18万人以上の従業員がいる大企業となっている。日本には2005年に進出した。

 人民解放軍との契約関係や、任の軍部出身という経歴、また元妻が共産党幹部の娘であることを踏まえ、米国はずっと前からファーウェイを警戒してきた。というより、目の敵にしてきたと言っていい。

 ファーウェイは2000年以降に米国市場に入り、米企業と連携を始める。だがすぐにソースコードを盗んだとして訴訟問題に。さらに09年頃からはNSA(米国家安全保障局)が任正非に対するスパイ工作を開始、内部文書や周囲の人物とのやりとりを調べ、その人脈や動向を監視していたことが判明している。

 12年には米連邦議会が52ページに及ぶ報告書を発表し、ファーウェイと、中国の別の通信機器大手である「ZTE」が、米国の安全保障への脅威であると主張。米企業にこれらの会社の製品を使用しないよう促した。当時から、ファーウェイは中国共産党や人民解放軍との関係性が疑われ、米国の企業や個人を狙ってスパイ行為をしているとの指摘があがっていた。

 というのも、中国はそのころまでに、米国に対して大々的にサイバー攻撃を仕掛けてきた実績があったからだ。米軍やサイバー安全保障専門家らの間で「タイタン・レイン」「オーロラ作戦」と呼ばれるような大規模サイバー攻撃を実施して、大量の機密情報や知的財産を盗み出していた。そうした過去から、米政府は中国系企業を警戒し、ファーウェイが「名指し」されたのである。

 ファーウェイ側はそうした米国による疑惑を全面否定してきたが、14年に米政府は正式に政府機関などでファーウェイ製品の使用を禁止する措置をとった。

 そんな状況のなかでも、ファーウェイは世界的に急成長する。17年には米Apple(アップル)を超え、スマホ販売シェアで世界第2位になった。

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