日本の「従業員エンゲージメント」が低い、4つの事情世界レベルで低い(1/4 ページ)

» 2018年12月27日 07時12分 公開
[川口雅裕ITmedia]

著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

 組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)

 1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。

 京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)


 組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する。

 日本企業の「従業員エンゲージメント」は、世界で最低レベルにあるそうだ。熱意を持って主体的に仕事に取り組み、ワクワク・イキイキしながら、成果を出して組織に貢献しようとするような従業員の割合は、世界でもっとも少ないレベルにあるという。

 米国の調査会社ギャラップによれば、エンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の割合は、米国の32%に対して、日本企業はわずか6%。「やる気のない社員」は約70%に上るらしい。もちろん、アンケートに回答する姿勢が日本人はあいまいで控えめになりがちだから、額面通りには受け取れない。が、それでも日本企業の従業員エンゲージメントの低さは実感するところであり、いくつも理由が思い当たる。

 1つ目は、時間と賃金がリンクしている結果、従業員は「内容の希薄な時間」を職場で過ごさざるを得なくなっていることだ。日本企業では、一部の管理監督者を除けばいくら能力があっても、短時間で成果を出しても、9時から17時まで会社にいなければ賃金を控除されてしまう仕組みになっている。

 早く仕事を片付けても、短時間で成果を出しても、決められた時間は職場にいて、仕事に従事しなくてはならない。その結果、能力が上がっても、業務が効率化されても、実際には「決められた時間を満たすようにゆっくりと仕事を進める」ようになってしまう。これが生産性が高まらない最大の理由なのだが、こうして生まれる「内容の希薄な時間」がエンゲージメントも低下させてしまう。

 時間と賃金がリンクし、9時から17時まで会社にいれば基本的にOKという仕組みは、従業員を、能力を存分に発揮する必要もない、夢中になって集中して取り組まなくてもよい、という意識にさせてしまう。あれこれと忙しく、テキパキと進めなければ間に合わない、期待に応えられないといった緊張感もなくなってくる。だから達成感も得にくい。

 「決められた時間を満たすように」会議も長くなりがちだし、必要かどうか分からないような業務が「生産」されていくこともある。時間対応型の賃金制度は、熱中や夢中や集中とは縁遠い「内容の希薄な時間」を生む。これが生産性が低い理由だが、生産性の低さがまた従業員のエンゲージメントを低下させ、さらに「内容の希薄な時間」を再生産していくような面もあるから、悪循環が起こっているとも言えるだろう。

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