「アルコール離れ」は悪いことばかりなのか 関係者の“不都合な真実”スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2019年01月22日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「アルコール離れ」の恩恵を受ける産業

 自殺が減っても、アルコール離れで景気が悪くなったら人生に悲観する人も増える、とか言う人もいるが、アルコール消費量が減っているからといって、日本人が「消費活動」自体をしなくなったわけではない。酒を飲まない代わりに何かを飲み、何かに金を使う。そちらの産業が活性化するので、そんなに落ち込むような話でもないのだ。

 分かりやすいのが、「炭酸水」である。

 炭酸水の生産量は06年には2万9000キロリットルだったが右肩上がりで増え続けて、16年には20万6000キロリットル。なんと10年で7.1倍と、人口減少をものともしない成長を遂げている。

 この成長エンジンのひとつに、「ビールの代用品」というニーズがあることは明白だろう。

 毎日、晩酌にビールや発泡酒を飲んでいた人が「休肝日」に炭酸水を飲んだところ、思いのほか「のどごし」があってハマってしまった。あるいは、ダイエットや健康のためにビールの代わりに炭酸水を飲んでいる、などユーザーの声がちまたに溢れているのだ。

 また、日本人の「アルコール離れ」の副作用でもある「家飲み」も酒類と異なる分野を活性化させている。

 冷凍食品などの「つまみ」だ。

 総務省の家計調査(総世帯)によると、08年から9年連続で冷凍食品の家計消費支出が伸びている。これを裏付けるように、日本冷凍食品協会によれば、冷凍食品の国内生産量は2年連続で過去最高を記録。比率としては、やはり飲食店などで出す「業務用」が多いが、近年は「家庭用」がじわじわと増えているという。

 08年といえば、日本人の1人当たり飲酒量がガクンと減ったタイミングだ。消費者が酒をガバガバ飲む楽しみ方から、「つまみ」とともにチビチビと楽しむ方向へ舵を切ったとも見えるのだ。

 「アルコール離れ」が進めば、酒を製造するメーカーや居酒屋などネオン系産業などはもちろん打撃は被るが、日本経済はそこだけで回っているわけではなく、当然「アルコール離れ」の恩恵を受ける産業も出てくるというわけなのだ。

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