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地方の有力スーパーが手を組んだ“1兆円同盟”誕生、イオンとどう戦う?小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)

» 2019年01月23日 06時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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 これまで地場産業でもあった食品スーパーは、地域密着度の高さで大手のライバルと差別化してきたという側面がある。ただ、これからの課題は、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスといった技術革新と小売業界がどう融合していくかという、これまで誰も経験したことのないテーマであり、これまで必要とされてきたノウハウとはある意味、別次元の話である。

 しかし、考えようによっては、これからの人口減少・高齢化によって労働力不足が深刻になる日本の小売業にとって、こうした技術革新は、もしかしたら救いの神となるのかもしれない。日本の食品スーパーは、独自に進化してしまったため、鮮度品質の高い商品は提供しているが、労働集約的で人件費コストもかかるやり方を基本としている。このため、業界は今後の人手不足の進行で、店が開けられなくなるのではという恐怖を強く感じている。

 こうした追い詰められた環境にいるからこそ、誰かが近いうちに技術革新を取り入れて、この問題を解決するに違いないとも思うのである。例えば、AIが全国の店舗の過去のデータから、今日の販売量を時間帯別に正確に予測して、ロボット化された集中加工センターから最適の商品が店舗に配送されるといったことが可能であれば、現状の問題の多くの部分が解決するかもしれない。

 技術革新の現状を考えれば、こうした想定も決して絵空事ではないところまで来ている。「必要は発明の母」という言葉が本当なら、新たなイノベーションが、課題先進国である日本から生まれる可能性は高い。そして、こうした労働生産性の高い新たなモデルを生み出せば、地域企業だった日本の食品スーパーは、世界に展開可能な産業になれる可能性さえ生まれるかもしれない。

 さまざまな環境変化や苦境を乗り越えてきた、機を見るに敏なリテールパートナーズ(丸久)が、ここで新たな決断をしたというのは、食品スーパー業界に新時代が来たことを示唆している気がするのだ。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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