日本のウナギ養殖で最大の問題とも言えるのが「ウナギロンダリング」である。現在、日本のウナギ養殖は国内で採捕されたウナギの稚魚(シラスウナギ)だけでは養殖池を埋められない状況で、外国からの輸入に頼っている。極端な不漁に見舞われた今漁期についていえば、池入れされた稚魚の輸入は過去最高の「76%」にのぼっている。
問題なのは、その輸入元である。財務省貿易統計によると、今漁期の池入れに用いられる去年の11月から今年の3月までに輸入されたウナギ稚魚約11.7トンのうち、99%の11.5トンは香港から輸入されている(図4)。しかし、香港にウナギの稚魚が遡上する川は存在しない。従って、香港から輸入されている現状自体が「おかしなこと」なのだ。
香港からのウナギ稚魚輸入が急増するのは07年になってからだが、この年はそれまでウナギ稚魚の主たる輸入先であった台湾が輸入を原則として禁止した年に当たる。以来、台湾のウナギ稚魚は一旦香港に密輸され、香港から日本に再び輸出されるという「ウナギロンダリング」が行われているのである。
ということは、今年池入れされたシラスウナギの76%、つまり実に4分の3以上が違法な「ウナギロンダリング」を経た台湾産である可能性が高いことになる。台湾からの密輸にもマフィアなどの反社会勢力が絡んでいる場合があるとも言われている。資源が激減しているニホンウナギは台湾でも絶滅危惧種に指定されている。
水産庁の統計などをもとに18年にワシントン条約事務局が公表した報告書によると、17年漁期に池入れされたウナギ稚魚のそれぞれ57%は違法や無報告の漁獲、あるいは違法取引にある可能性が高いと指摘されている。同様の統計を用いた場合、去年池入れされた稚魚の62.4%、今年池入れされた稚魚に至っては実に85.5%が密輸・密漁・未報告由来の可能性が高いことになる。通常ウナギの養殖期間は半年から1年半であるため、現在販売されている国産養殖ウナギは、今年か去年の漁期にシラスウナギとして池入れされていることになる(図5)。
ということは、今年のスーパーに並ぶ国産養殖ウナギの蒲焼10匹のうち6匹以上が違法・無報告のシラスウナギに由来する可能性があるという驚くべき状態にあるのだ。
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