「仕事が辛い」のは、どの国の労働者も抱えている悩みだ。が、日本人ほどメンタルをやられないのは、ポジティブシンキングだからではなく、「お金のため」と割り切っていることが大きい。労働の対価として賃金がもらえるので、時間が奪われることや、理不尽なことにもどうにか耐えているのだ。
しかし、独自の信仰を持つ日本人は違う。もちろん、お金はもらいたいが、労働に「働ける喜び」「やり甲斐」「成長が実感できる」、さらには「みんなが喜んでくれる」などという、精神的な幸福をやたらとのっけてしまう。これが他国と異なる最大のポイントなのだ。
それを示すデータもある。パーソル総合研究所が日本を含むアジア太平洋地域14の国・地域で、「仕事を選ぶ上で重視すること」を調査したところ、日本をのぞく13カ国でほぼ似たような傾向になった。
細かな違いはあるが、だいたい「希望する収入が得られること」がダントツに多い。もしくは「仕事とプライベートのバランスが取れること」がトップになる。つまり、あくまで「仕事」というのは、望む賃金を得る手段にすぎず、日常生活と切り分けて考えているのだ。
しかし、日本だけが違っている。1254ポイントで「希望する収入が得られること」が一応トップだが、他国ではまったく上位にこない「職場の人間関係がよいこと」(1230ポイント)がほとんど変わらず、同じく他国の労働者がまったく重視していない「休みが取れる/取りやすいこと」(1136ポイント)と並ぶのだ。
つまり、日本人にとって、仕事とは日常生活のど真ん中なのだ。お金も欲しいが、それと同じくらい重要なのが、人間関係に悩まずに楽しい時間が過ごせるのか、しんどくなったら休めるか。プライベートと切り分けるどころか、仕事が「人生の中心」にあるのだ。
このような「人は金のためだけに、働いているわけではない」というクセの強すぎる労働観が、先進国最低レベルでいよいよ韓国にまで抜かれた「安いニッポン」をつくってきた、と筆者は考えている。
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