変わりゆく品川に息づく、カフェの温もり:新連載・人と人、人と街をつなぐカフェ(1/5 ページ)
「この街を活気付けたい」――。かつて宿場町として栄えた北品川の商店街で人々を迎えているカフェ。「クロモンカフェ」と「KAIDO books & coffee」のオーナーたちの思いを紹介したい。
著者プロフィール
川口葉子(かわぐち ようこ)
ライター、喫茶写真家。
著書に『東京カフェ散歩 観光と日常』、『京都カフェ散歩 喫茶都市をめぐる』(祥伝社)、『街角にパンとコーヒー』、『東京の喫茶店 琥珀色のしずく77滴』(実業之日本社)他多数。雑誌、Web等でカフェやコーヒー特集の監修、記事執筆多数。Webサイト『東京カフェマニア』主宰。
都市には人と人、あるいは人と街をつなぐ場所として機能するカフェがある。それらは最初からコミュニティーカフェを目指して作られる場合もあれば、ゆるやかに自然発生的に人々の居場所へと醸成されていく場合もある。この連載ではそんな「つなぐ」カフェの現在と、作り手たちの表情を紹介していきたい。
今回取り上げるのは、旧東海道の宿場町、北品川の商店街にあって好対照をなす2軒である。1軒は、2009年に女性がオープンした「クロモンカフェ」。もう1軒は、2015年夏に男性が仲間たちと作ったばかりの「KAIDO books & coffee」だ。
地元の良さを伝えていきたかった
品川エリアは2020年の東京オリンピックに向けて再開発が進んでおり、山手線の新駅が品川〜田町間に誕生することから、東京で最も大きく変化すると予想される一帯だ。街の魅力は何といっても交通の便の良さ。江戸の昔、東海道五十三次の第一宿として栄えた時代から、品川は旅の玄関口だったのだ。
「旅人を迎え入れては送り出してきたこの街は、自由で風通しのいい気風が魅力。駅前には高層ビルが建ち並んでいるけれど、そこから十数分も歩けば古い街並みやお寺が現れ、釣り船が停泊する浦の風景が広がります。北品川の商店街には履物店や海苔屋さんがまだ残っているんですよ」
クロモンカフェの店主、薄葉聖子さんはバンダナとエプロン姿でこやかに語る。
「それでも昔ながらのお店がどんどん消えていくのを見て、この5、6年で街の人々がようやく地元の良さ、大切さに気付き始めた。地元に人を呼ばなくちゃ、って」
クロモンカフェは古びた小さな建物の2階にあり、その佇まいは看板がなければ普通の民家に見えて通り過ぎてしまいそうだ。2009年から2012年まで品川神社の境内で「品川てづくり市」を主宰していた薄葉さんは、当初はてづくり市の参加者の集会所のつもりでこの場所を開いた。くつろぐ人々にお茶を出しているうちにカフェになったのだという。
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