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寝台特急「カシオペア」が復活、次は東北・北海道新幹線の高速化だ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)

東京と札幌を結ぶ寝台特急「カシオペア」が早くも復活する。2016年3月、北海道新幹線の開業を理由に廃止された列車が、なぜ北海道新幹線開業後に復活できたか。その背景を考察すると、北海道新幹線の弱点「東京〜新函館北斗間、4時間の壁」も克服できそうだ。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


北海道新幹線開業関連で廃止のウソ

 4月6日、JR東日本は「E26系『カシオペア』車両を使用した臨時列車を運転します」と題したプレスリリースを発表した。事実上の寝台特急カシオペア復活だ。

カシオペアが早くも復活(出典:Wikipedia)
カシオペアが早くも復活(出典:Wikipedia

 寝台特急「カシオペア」は、東京〜札幌間を結ぶ夜行列車として1999年に誕生した。同区間を運行していた寝台特急「北斗星」のグレードアップ版という位置付けだ。北斗星は国鉄時代から使っていた客車をリフォームし、1970年代から1980年代にかけて社会現象にもなった「ブルートレインブーム」の面影を残す。これに対してカシオペアは、新型客車E26系を製造し、客室はすべてA寝台2人用個室、特に上野側最後尾は展望スイートを備え、「豪華寝台特急」と呼ばれた。その人気は北斗星とともに、最後まで衰えなかった。

 北斗星廃止の主な理由は客車の老朽化だ。これは乗車してみれば納得できる。1970年代に製造された客車は車齢40年以上。客室内はきれいだったけれど、外板はゆがみ、錆(さび)も浮いていた。走行装置も傷んでいたことだろう。青函トンネルの新幹線対応工事で、北斗星、カシオペアの同日運行は難しいという理由もあった。しかし、カシオペアのE26系客車は車齢17年。まだまだ現役。税法上の減価償却期間は20年である。在来線車両は30年から40年程度は使える。北斗星がその証拠だ。

 カシオペアが廃止された理由は「北海道新幹線」と説明された。青函トンネルを北海道新幹線が使用するため、貨物列車以外の在来線列車は廃止される。技術的な問題として、北海道新幹線は使用電圧が異なり、信号システムも変わる。従来、青函トンネルで使っていた電気機関車は使えない。運用面の問題として、高速な新幹線列車と在来線列車は相容れない。貨物列車と新幹線列車の共存だけでも大問題となっている中で、観光客向けの寝台特急の入る余地がない。

 しかし、多少の技術をかじっている鉄道ファンとしては、この説明に納得しがたい。確かに新幹線と在来線は線路の規格が違う。これは一般常識でもある。しかし、青函トンネルは在来線貨物列車と共用するため、線路にレールを3本設置して、在来線と新幹線の両方に対応する。E26系客車も通行可能だ。電化規格と信号設備の問題は、JR貨物が新たに導入する電気機関車を借用すれば解決できる。

復活するカシオペアは、上野発上野行きクルーズトレインと、上野〜札幌間の片道便で運行予定。クルーズトレインは2017年開始の「トランスイート四季島」のテストケースにもなる(出典:JR東日本プレスリリース)
復活するカシオペアは、上野発上野行きクルーズトレインと、上野〜札幌間の片道便で運行予定。クルーズトレインは2017年開始の「トランスイート四季島」のテストケースにもなる(出典:JR東日本プレスリリース
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