バーバリーの穴は大きすぎた ライセンス切れの三陽商会が業績不振で大リストラ(1/2 ページ)
45年に及ぶ英バーバリーとのライセンス契約を昨年6月末に終了してから1年余り。アパレル大手・三陽商会の売り上げが大幅に落ち込んでいる。
アパレル大手の三陽商会が、45年に及ぶ英バーバリーとのライセンス契約を昨年6月末に終了してから1年余りが経過した。売上高のほぼ半分を稼いでいた主力ブランドの抜けた穴は大きく、駆け込み需要の反動もあって、2016年6月中間期の連結売上高は前年同期比39%減の335億円と大幅に落ち込む見通しだ。後継事業として立ち上げたブランドの売り上げが思うように伸びず、そこに衣料品全体の販売不振が追い打ちをかけた構図だ。10月に全社員の約2割にあたる約250人の希望退職を募ることも決定。消費回復の兆しが見えないなか、「バーバリー依存」から脱却し、成長軌道に復帰するための正念場は続く。
「もっと認知度を上げていかないといけない」
三陽商会の佐久間睦専務執行役員は、昨年7月に立ち上げた新ブランド「マッキントッシュロンドン」の2年目に向けた課題を自己分析する。
マッキントッシュは英国の老舗ブランドで、布地の上にゴム素材をコーティングした「ゴム引き」のコートで知られる。同社はライセンスを保有する日本の八木通商と組み、07年から30代向けブランド「フィロソフィー」を展開してきた。「ロンドン」はその上位ブランドと位置づけられ、ファッションに関心の深い45歳以上の男女を主なターゲットにしている。
三陽とバーバリーの蜜月関係に終止符が打たれた背景には、直営店中心の販路に切り替え、シャネルなどと並ぶ「さらに上」のラグジュアリーブランドに移行したいバーバリー側の意向があったとされる。三陽は日本独自の派生ブランド「ブラックレーベル」「ブルーレーベル」を展開するなどして日本定着に貢献してきたが、近年はラグジュアリーブランドとして世界統一の商品構成を志向するバーバリーとの溝が目立っていた。
三陽は、コートを主体とする点で共通するマッキントッシュなら、バーバリーの育成で培ったノウハウを生かし、新たな収益源にできると考えた。その滑り出しは順調だった。バーバリーを展開していた約360店のうち、当初予想を60店も超える約260店の確保に成功。9月半ばまでに、ほぼ全店のオープンにこぎつけた。
だが、抜群の知名度を誇るバーバリーとの差はあまりにも大きかった。立ち上げ直後の昨年8月、30〜50歳の男女約2000人に知っている英国ブランドを3つ挙げるよう質問したところ、マッキントッシュと答えた人はバーバリーの28分の1しかいなかったという。同社もそれは自覚しており、広告宣伝に多額の費用をつぎ込んだものの、3カ月後の10月時点でも18分の1にとどまった。コートなどの「重衣料」が多いため、暖冬にも足を引っ張られた。
ちなみに、契約終了前の15年1月に16店舗だったバーバリーの直営店は、直近で26店舗(子供服の店舗を除く)まで増え、日本事業は黒字を確保している。
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