「列車の動力」革新の時代へ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」2017年新春特別編(2/5 ページ)
2017年3月ダイヤ改正は新幹線開業などの大きなトピックがない。しかし、今後の鉄道の将来を見据えると「蓄電池電車」の本格導入に注目だ。地方の非電化路線から気動車が消える。大都市の鉄道路線から架線が消える。そんな時代へのステップになるだろう。
本格的な「蓄電池電車時代」の到来
ほかにも地域ごとにトピックがあるけれども、ここではもう少し広く、長期的な視野で特徴を挙げよう。鍵になる路線はJR東日本の烏山(からすやま)線と男鹿線。JR九州の若松線(筑豊本線)だ。どれも非電化の区間で、2017年3月改正から蓄電池電車が大活躍する路線となる。いずれもローカル線だけど、鉄道技術面では最先端だ。
烏山線は栃木県の非電化路線だ。東北本線の宝積寺駅と烏山駅を結ぶ。路線距離は20.4キロメートルだ。ほとんどの列車が東北本線に乗り入れて宇都宮駅を発着する。烏山線では2014年のダイヤ改正から2両1編成の蓄電池電車「EV-E301系」が稼働している。現在は15往復のうち3往復が蓄電池電車だ。2017年3月から蓄電池電車を3編成増備して、すべての列車が蓄電池電車になる。実用試験が成功し、本格導入となる。
男鹿線は秋田県の非電化路線だ。奥羽本線の追分駅と男鹿半島の男鹿駅を結ぶ。路線距離は26.6キロメートルだ。こちらは全列車が奥羽本線に乗り入れて秋田駅を発着する。2017年3月のダイヤ改正以降、蓄電池電車2両1編成を投入し、定期列車15往復のうち2往復を蓄電池電車「EV-E801系」に置き換える。運行開始日はまだ決まっていない。しかし車両は既に秋田に到着し、試運転が始まっている。
若松線は筑豊本線のうち、若松駅〜折尾駅間の非電化区間だ。筑豊本線は若松〜原田間の66.1キロメートルの路線で、かつては筑豊炭田の石炭を若松港へ運んでいた。現在は旅客輸送の動向に合わせて運行系統が分かれており、若松駅〜折尾駅間を若松線、折尾駅〜桂川駅間は電化され、篠栗線と合わせて福北ゆたか線と呼ばれる。桂川〜原田間は非電化のままで原田線と呼ばれている。
若松駅〜折尾駅間は10.8キロメートル。一部の列車が福北ゆたか線に乗り入れる。この区間は2016年10月から蓄電池電車「BEC819系」が2両1編成で投入されている。2017年3月改正で、6編成12両が追加される。この区間はすべて蓄電池電車になる予定だ。また、一部の列車は福北ゆたか線に直通し、博多駅を発着する。こちらも烏山線と同様で、実用試験が成功して本格導入という段取りだ。
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