星野リゾート「リゾナーレ八ヶ岳」の成長が止まらない理由:総工費15億円でリニューアル(1/5 ページ)
2001年、ホテル・旅館の運営会社として星野リゾートが手掛けた第1号案件が、山梨県にある「リゾナーレ八ヶ岳」だ。運営開始から3年後に黒字化、現在の売上高は40億円を超える。その好業績の裏側に迫った。
山梨県の北西部、長野県との県境に位置する北杜市は、八ヶ岳や甲斐駒ヶ岳といった山々に囲まれた、「水」の里として知られる風光明媚な町だ。飲料メーカー大手のサントリーがボトリング工場や蒸留所を構え、ミネラルウォーター「サントリー天然水 南アルプス」やシングルモルトウイスキー「白州」を製造する。
また、北杜市は日照時間が年間2081時間(全国平均1934時間)と長く、ワイン作りに最適な土地ということで、近年はワイナリーも増えている。その代表例が「ドメーヌ ミエ・イケノ」だ。ワイン醸造家の池野美映さんがブドウ造りから醸造まで自らの畑と醸造施設で行うドメーヌ ミエ・イケノのワインは、ワイン愛好家から絶大な人気を誇り、新酒を発売すると瞬く間に完売してしまうほど。東京ではなかなかお目にかかることはない。
そんな北杜市は、観光客が一時は減少したものの、近年再び増加傾向と活気付いている。その集客の原動力の1つとして売り上げを伸ばし続けているホテルがある。星野リゾートが運営する「リゾナーレ八ヶ岳」だ。
同施設は星野リゾートが2001年に運営を開始すると、3年後の04年には黒字化。07年に売上高30億円、そして15年には40億円を突破した。現在の年間来客数は、宿泊客が約20万人、外来客が5万人で、客室の年間稼働率は8割に迫る。
そこで歩を止めず、さらなる成長曲線を描こうとする。17年1月から約3カ月間、開業以来初めて全館を休館し、総工費15億円を投じて大規模なリニューアルを敢行。同施設がコンセプトに掲げる「ワインリゾート」の強化に向けて客室やレストランなどを刷新、機能性やデザインの充実を図ることで、一層の売り上げアップを目指しているのだ。
当初は赤字スタートだったリゾナーレ八ヶ岳が、ここまで好業績を続けている理由とは一体何だろうか。
ホテル運営の第1号案件に
実はこのリゾナーレ八ヶ岳は、星野リゾートにとって大きな意味を持つ施設であることをご存じだろうか。この施設から同社はホテル・旅館の運営会社として再スタートを切ったのだ。
元々、この施設は「リゾナーレ小淵沢」という名前で、流通・小売業のマイカルが経営していた会員制ホテルだった。世界的な建築デザイナーであるマリオ・ベリーニ氏が手掛け、1992年に開業。まだバブル景気の残り香が漂っていた時代だった。
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