受動喫煙防止法の廃案が逆に飲食店を苦しめる?:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
厚生労働省が受動喫煙防止法案を骨抜きにする代替案の検討を開始するなど、同法案が事実上の廃案となる可能性が出てきた。飲食店の経営を守るというのが建前だが、一連の動きは、別な形で外食産業に影響を与える可能性がある。それはデリバリービジネスの急拡大である。
厚生労働省が受動喫煙防止法案(健康増進法改正案)を巡り、30平方メートル以下の飲食店に限って喫煙を認める従来方針を改め、150平方メートル以下を喫煙可とする代替案を検討している。
150平方メートル以下が喫煙可能になると、大半の飲食店で喫煙できることになってしまうため、この代替案が通った場合には、受動喫煙防止法は事実上、廃案になったことと同じになる。同省は東京オリンピックを契機に、先進各国と同レベルの受動喫煙対策を実施したいとの意向を持っていたが、飲食業界を中心に反対意見が根強く、これに抗しきれなかった格好だ。
日本は公共の場で喫煙ができる数少ない先進国だが、喫煙率はもはや18.2%しかない(JT調べ)。若い世代の喫煙率に至っては毎年、着実に低下しており、近い将来、国民のかなりの割合が非喫煙者となるのはほぼ確実といってよい。だが、受動喫煙防止法が廃案、もしくは骨抜きになった場合には、飲食店の環境と国民の生活習慣には大きな乖離(かいり)が生じることになる。
これまで非喫煙者は、店舗が喫煙可あるいは分煙が不十分であっても、他に選択肢がなく、たばこの煙を受忍するという形で飲食店を訪れていた。だが近年、テクノロジーの発達によって飲食店の利用者に新しい選択肢が提供されるようになった。それはデリバリーの利用である。
以前から日本の外食産業の一部には「出前」というシステムがあり、自宅などへのデリバリーが行われていた。だがネットやスマホの普及によってサービス内容が大きく変わってきたのである。
利用者はスマホを使ってあらゆる出前を一気に検索し、決済までできるようになった。しかも、自宅には(スマホやPCに入れた)YouTubeやNetflixといった豊富なコンテンツサービスがそろっている。わざわざたばこ臭い飲食店にいかなくても、自宅で食事やパーティを楽しめる環境が整っている。
関連記事
- トヨタが販売車種を半数に絞る理由
トヨタ自動車が、国内で販売する車種を半分に削減する方針を固めた。同時に地域別の販売戦略を担当する新しい部署も立ち上げる。トップメーカーであるトヨタは戦後、一貫してフルラインアップの製品戦略を進めてきたが、今回の改革は、同社にとって極めて大きな転換点となる。 - 欧州で加速するEVシフト トヨタへの影響は?
スウェーデンの自動車メーカー、ボルボが内燃機関のみで走行する自動車の生産を段階的に廃止する計画を明らかにした。ほぼ同じタイミングで仏国のマクロン政権が2040年までに、内燃機関を搭載した自動車の販売を禁止する方針を表明している。欧州を震源地にEVへのシフトが一気に進む可能性が出てきた。 - 三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる
銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。 - 「AIアナウンサー」年間1000円の衝撃
エフエム和歌山が「ナナコ」と名付けたAIアナウンサーの運用を始めている。年間で掛かる費用は1000円程度だという。さまざまなAI機能が安価で簡単に買える時代、ビジネスの現場では何が起こるのか。 - 将来稼ぐ力を予測する「AI融資」の狙いとは
ソフトバンクとみずほ銀行が、AIを活用した個人向けの融資サービス「AIスコア・レンディング」を展開している。同サービスでは、AIが利用者の「将来稼ぐ力」を分析し、適切な金利を決めているという。その狙いとは……。 - 吉田茂の愛車も登場! 名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」開幕(写真34枚)
名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」の様子を写真でお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.