受動喫煙防止法の廃案が逆に飲食店を苦しめる?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
厚生労働省が受動喫煙防止法案を骨抜きにする代替案の検討を開始するなど、同法案が事実上の廃案となる可能性が出てきた。飲食店の経営を守るというのが建前だが、一連の動きは、別な形で外食産業に影響を与える可能性がある。それはデリバリービジネスの急拡大である。
今後もデリバリー市場は拡大する
自宅へのデリバリーの普及によって、居酒屋やバーといった業種がすぐに縮小するとは考えにくい。だがシェアリングエコノミーやAI(人工知能)技術の発達を考えると必ずしもそうとは言えなくなってくる。
もしデリバリーによる飲食市場が拡大する見込みが大きくなった場合、ビルの空き室や空家など、いわゆる有休不動産をパーティールームに改装するケースも増えてくるだろう。ネットのインフラを活用すれば、こうしたパーティールームを検索して予約することはいとも簡単に実現できるし、AIを使えば、デリバリーと場所の確保を同時に行うこともたやすい。既存の飲食店から根こそぎ顧客を奪ってしまうという話もあながちうそではなくなってくるのだ。
社会のネット化が進むとデリバリー市場が拡大する。これは各国共通の現象といってよい。米国では、好景気が続いているにもかかわらず、レストランの売り上げが鈍化するケースが目立つようになっており、外食産業は相次いで宅配メニューの強化に乗り出している。
日本でも市場の流れに敏感な企業はすでに動き始めている。
配車アプリ大手の米Uber(ウーバー)は、外食のデリバリービスである「UberEATS(ウーバーイーツ)」を、楽天も同様のサービスである「楽びん!」を提供している。LINEも2017年7月から、アプリ内で飲食店の出前メニューを注文できる「LINEデリマ」をスタートさせた。
例えばウーバーイーツは、大学生などが空き時間を利用してアルバイトとして料理を運んでおり、都心部では自転車シェアリングのサービスをフル活用している。こうしたやり方であれば、事実上、無制限に業容を拡大することが可能であり、市場規模の拡大に合わせて柔軟な運営ができる。こうしたアルバイトの勤怠管理や、誰にどの料理を運ばせるのかといった判断はAI化によってさらに高度化するだろう。
吉野家やマクドナルドなど、飲食店の側も宅配メニューを強化している。近い将来、宅配サービスにうまく対応できた企業とそうでない企業には大きな差がついているはずだ。
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