なぜ人口3万人の田舎に全国から起業家が集まるのか:地方創生の若手リーダー(1/3 ページ)
人口約3万人の岩手県遠野市に15人もの起業家が全国から集まり、さまざまなプロジェクトを立ち上げている。プロジェクトの母体となっているのが、Next Commons Labという団体だ。なぜこれだけの起業家を地方に集められたのだろうか。
岩手県遠野市。人口約3万人のこの小さな地域に15人もの起業家が全国から集まり、それぞれがプロジェクトを立ち上げている――。その代表例が遠野のホップ農家とコラボしたプロジェクト。キリンビールの協力を受けながら「クラフトビール」の開発を進めており、2018年4月には商品化するための醸造研究所を市内に開設するという(販売時期は未定)。
遠野はホップの生産量(101トン)、栽培面積(60ヘクタール)で日本一。だが、ホップ農家の人口減少が課題となっていた。このプロジェクトでは、ホップの栽培だけでなくビールの醸造までを手掛けていくこで、遠野を「ビールの里」として産業を盛り上げていく計画だ。また、空き家をリノベーションし、開発したクラフトビールを楽しめる飲食店を市内各地でオープンしていくという。
その他、移住のハードルを下げるための「超低価格住宅の開発」プロジェクトでは生活に必要な機能を絞り込み、150万円前後で購入できる住宅の開発を進めている。ワンルームマンションほどのスペースにすることで建材や断熱材などの使用量を最小限にしてコストを抑えているという。
この他にも、10以上のプロジェクトが立ち上がっており、遠野を盛り上げようと起業家たちが日々奮闘している。
これらのプロジェクトの母体となっているのが、16年に設立されたNext Commons Lab(以下、NCL)という団体だ。住民票を移すことを条件に、起業家に対して3年間の生活費(月16万円前後)を支給する自治体と、事業化をサポートする企業、そして現場でプロジェクトを推進していく起業家の3者をつなげ、プロジェクトを生み出している。
このNCLの取り組みは遠野だけでなく、奥大和(奈良県)、加賀(石川県)、南三陸(宮城県)、弘前(青森県)、南相馬(福島県)――など各地で広がっており、合計で約30人の起業家を地方に送り込んでいる。
なぜ、NCLはこれだけの起業家を地方に集められるのか。NCLの発起人、林篤志代表に話を聞いた。
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