JR信越線で「15時間立ち往生」は、誰も悪くない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
1月11日夜から12日朝までに発生したJR信越線の雪害立ち往生事件について、情報と所感を整理してみた。体調を崩した方は気の毒だったけれども、何よりも死者がなく、最悪の事態に至らなくて良かった。本件は豪雪災害である。人災ではない。今後に生かそう。
時系列を整理する
いくつもの報道から、信越線立ち往生の場所と時系列を整理した。まず、場所については航空写真に写った車両、線路、用水路の様子から「東光寺駅から帯織駅へ向かって約1キロ地点」と分かる。一部報道では東光寺駅から300メートルの地点とされていたけれど、それは1回目の停車だ。長時間停車した場所はさらに800メートルほど進んだところ。テレビ報道では踏切警報機の音が聞こえていた。この付近には2つの踏切があり、YouTubeで前面展望動画を確認したところ、踏切警報機が設置されていた。
時系列は次の通りと推定される。
1月11日
07:00頃 新潟駅構内でモーターカーによる除雪作業が行われた
15:07 当該列車、新潟発長岡行き、列車番号444M、新潟駅発車時刻
16:25 444M、大雪のためダイヤが乱れており、78分遅れで発車
18:56 1回目の立ち往生。東光寺駅を発車して300メートルほど過ぎた先の東光寺踏切付近
18:30頃 新潟駅構内でモーターカーによる除雪作業が行われた
19:00頃 1本前の電車が立ち往生前の現場を通過(442M?)
20:10頃 保線作業員が1回目の立ち往生現場に到着、人力で除雪開始
20:46頃 列車指令より運転再開指示、運転再開
21:11 再び停止。2回目の立ち往生現場。列車の走行装置系に雪がたまる
21:44 運転士が発進を試みる。しかし車輪が空転のような振動を感じた
22:00過ぎ 除雪車(ラッセル車)の投入を決定
23:15 40代男性が体調不良を訴える
23:56 車両センターで現場の除雪作業を準備する
1月12日
01:37 除雪車両が車両センターを出発、本線に入る
02:22 見附駅(帯織駅の1つ先)に乾パンと栄養補助食品が届く
02:40 列車に飲料水が届く
04:30過ぎ 一部の乗客が家族の迎えなどで降りる
05:00前 携帯非常食などが届く
07:37 信越線では別の3駅でも電車が停まったままと報じられる。見附駅、東三条駅、羽生田駅
09:00 この時間までに約230人が電車を降りた。家族や知人が迎えに来た。車内の乗客は残り約200人
09:30頃 除雪車到着。出発から8時間後。雪をかきながら進む除雪車はスピードが遅いため到着が遅れた。現地では除雪車での作業のほか、JR東日本やグループ会社の社員たちによる人力の除雪が行われた
10:26 運転再開
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