企業は「クラウドファンディング」をどう活用するべきか:有識者が解説(2/3 ページ)
急激に市場規模が拡大しているクラウドファンディング――。新しい資金調達の手段として注目されているが、企業はこの新しいツールとどのように向き合っていけば良いのだろうか。
「投資ツール」ではなく「マーケティングツール」
しかし、注意してほしいのは、購入型クラウドファンディングは、「投資ツール」ではないということです。「ファンディング」と聞くと、どうしても「投資」の一種であると考えてしまいがちです。ここは多くの起案者が勘違いしてしまうポイントです。
「金融型」の場合は、支援者にお金やそれに相当するもので返礼することができるので、投資の一種と考えることもできますが、先にも述べた通り、購入型のクラウドファンディングは投資というよりは、「マーケティングツールの1つ」と考えた方がいいでしょう。
なぜなら、日本における購入型クラウドファンディングの支援者の大半は、投資や寄付が目的ではなく「新しくてユニークな商品が欲しい」から支援する人がほとんどだからです。一般的な投資のように企業の成長や利益を期待しているわけではありません。
投資をしてもらう感覚で購入型クラウドファンディングを活用しても、多額の資金を調達することは難しいでしょう。お金が集まるかどうかは事業の成長性ではなく、「欲しい商品」「欲しいリターン」を提示できているかが重要なのです。
また世界的に見ると、日本のクラウドファンディングサイトは手数料が高いのも特徴です。その点も考慮すると、やはり資金調達をゴールとするのではなく、あくまで通過点として考え、「新商品の予約販売」のツールとして認識し、活用することが望ましいでしょう。
資金調達だけではない
クラウドファンディングは、商品の「ブランディング」「マーケティング」「広告宣伝」につながるという利点もあるので、その点で多くの企業が注目しています。
例えば、透明で丸いリッチな氷を簡単に作る「ポーラーアイストレイ」。調達額が目標金額の「6000%」を超えたとして、テレビや新聞など、さまざまなメディアから注目を浴び、一躍有名になりました。クラウドファンディングで成功することによって、メディア掲載が期待できます。
また、私が関わったあるプロジェクトでは、目標金額を達成した直後に大手百貨店から声が掛かり、流通展開につながるということもありました。
このように、資金調達だけではなく、商品の「ブランディング」「マーケティング」「広告宣伝」の手段として活用することも非常に有効です。
近年、インターネット・SNSなどの普及により、企業はさまざまな方法でマーケティングすることができるようになりました。今後、クラウドファンディングの普及が新たな商品のPR手段となり、企業のマーケティングの形を変えていくでしょう。
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