ウソの求人情報を出すブラック飲食店の言い訳:飲食業界の働き方改革(1/2 ページ)
人手不足に悩む飲食業界。人材が定着しないことが大きな原因の1つだ。抜本的な改善策は従業員の待遇改善だが、だましだまし求人活動を行う飲食店も少なくない。
飲食業界は深刻な人手不足に苦しんでいる。18年1月に厚生労働省が発表した飲食業の「接客・給仕」分野における有効求人倍率は4.29倍。全体の有効求人倍率である1.59倍を大きく上回る。
業界からは「求人広告を出しても応募がない」「入社してもすぐ辞めてしまう」といった声が出ているが実態はどうなのか。どのように働き方改革を進めるべきなのか。飲食業向けに人材紹介を行うクックビズ(大阪市)を取材した。
独立志向の求職者が減っている
まず、クックビズの人材紹介事業について簡単に説明しよう。
求職者から希望する職種などを聞き取り、飲食店との面接には同社の営業担当者が同行する。無事に採用が決まったあとも定期的に連絡をとり、就労状況を確かめる。職場で何か問題があれば、当人と店側の話を聞いたうえで円満に解決するよう促す。店側に問題があると判断した場合には、取引を停止することもある。求職者の利益を守るのはもちろん、飲食店と求職者のミスマッチを避けるためだ。
クックビズの久田雅士人材紹介事業部部長は最近の求人動向についてこう説明する。
「いつかは自分の店を持ちたいという独立志向の人はここ3〜4年で減ってきています。逆に、特定の店舗やチェーン店で着実にキャリアアップをしたいと考える人が増えてきました。ネットをちょっと調べれば飲食業の廃業率が高いことはすぐ分かります。独立しようとしても家族の理解が得られないケースも増えています」
独立志向の求職者が多かった時代ならば、きつい就労環境であっても歯を食いしばって働くのが当たり前だった。しかし、安定志向を求める求職者が増えた。飲食業界は空前の売り手市場となり、職場が気にいらなければすぐに辞めようとなる。
飲食店の経営者や店長の意識を変えなければ、せっかく採用しても人材は定着しない。求人広告を出す費用がかさむばかりでなく、面接や仕事を教える時間も無駄になる。昔ながらの「仕事を見て覚えろ」「暴力は当たり前」といった職場環境では成り立たないと久田部長は指摘する。
「従業員が辞める原因の8割は労務環境と人間関係です。丁寧に仕事を教える。求人広告に掲載した労働条件を守る。こういった当たり前のことを徹底すれば、離職率は下がります」
離職率を下げ、従業員を早期に戦力にすることが働き方改革の前提になる。
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