ラフプレーと財務職員自殺 “服従の心理”の末路:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
日大アメフト部のラフプレー問題で、選手が監督やコーチの指示に逆らえなかった心情を語りました。悪いことだと分かっていても、権力者の命令に従ってしまう。その心理は誰にでも働く可能性があり、50年以上前の実験でも明らかになっています。
50年以上前に明らかにされた、権威者に従う心理
まず、ミルグラムは「記憶に関する実験に協力してくれる人を募集します」という表向きの理由で、一般から実験の協力者(被験者)を募集しました。
実験協力者(40人)には、この実験が参加者を「生徒」役と「教師」役に分けて行う、「学習における罰の効果を測定するものだ」いう説明がされました。
そこで協力者たちはミルグラムが用意したくじ引きで、「教師」「生徒」に分けられ、それぞれペアを組まされました。しかし、実はこれはダミーで、実際には一般から募集した協力者は全員「教師」になるように仕組まれていました。「生徒」役は役者さんが演じるサクラでした。
続いて実験方法です。「教師」は「生徒」に、2つの対になる単語を読み上げます。その後、教師は単語の一方のみを読み上げ、それに対応する単語を生徒が答えるというものでした。
回答は教師が「4択」で読み上げ、生徒はそこから選びます。正解すると、教師は次の単語リストに移り、間違えると、教師は生徒に電気ショックを流すよう指示を受けました。
送電器は15ボルトから450ボルトまで30段階のスイッチに分けられていて、1つ間違うたびに電気ショックのレベルを上げるよう指示されています(実際には電気は流れないのだが、生徒役=役者は電気ショックが与えられるたびに悲鳴を上げたり、抗議をするなどの演技を行う)。
実験は、電気ショックという罰に苦しむ生徒役の声を聞き、「もう止めましょう」と教師役が実験の中断を訴えた時点で終了するというルールが決められました。
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