シリアから解放の安田氏に問われる、ジャーナリストとしての“2つの姿勢”:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
シリアで武装組織に拘束されていた日本人ジャーナリストが解放された。世界的なベテランジャーナリストに見解を聞くと、ジャーナリストとしての「姿勢」について指摘していた。安田氏に欠けていた姿勢とは?
10月23日、シリアで武装組織に拘束されていたジャーナリストの安田純平氏が3年ぶりに解放された。日本ではすぐに菅義偉官房長官が記者会見を開き、安田氏の解放についての情報がカタール政府からもたらされたと発表した。
安田氏はトルコのイスタンブールから日本へ帰国、成田空港で妻や両親と再会し、記者会見を開くことなく空港を去った。
いまさら言うまでもないが、解放の一報から、日本ではテレビやインターネットなどを中心に、安田氏について「自己責任論」をはじめとするさまざまな意見が飛び交った。
筆者はこの「解放騒動」を取材で訪れていた台湾で知った。台湾でもテレビでこのニュースを流していた。帰国後、この騒動についていろいろな意見を見聞きしたが、もはや賛否ともにほとんどの見解は出尽くした感がある。
そんな中、筆者は先日、あるベテラン米国人ジャーナリストとこの件について話をする機会があった。このジャーナリストは1994年にジャーナリズム界の最高賞である「ピュリツァー賞」を受賞した元新聞記者で、その後は米ニューズウィーク誌の記者として活躍、戦中のイラクやソマリアに駐在していた戦場ジャーナリストでもある。筆者も、ニューズウィークで同僚として一緒に取材・執筆したことが何度かあり、今もよく連絡を取り合う親しい友人でもある。
このジャーナリスト、レノックス・サミュエルズ氏から見れば、今回の一連の騒動はどう見えるのか。もちろんこのジャーナリストの言っていることが全て正しいというわけではない。だが、ピュリツァー賞も得たベテランジャーナリストのサミュエルズ氏がどんな見解を持ったのか。彼の言葉に耳を傾けてみたい。
関連記事
- どうすれば救えるのか シリアで人質の日本人を
シリアで武装組織に拘束されているとみられるジャーナリスト・安田純平氏の最新映像が公表された。報道によると、武装組織から身代金を請求されているが、日本政府はその要求には応じない方針だという。では、どのようにして安田氏を助け出すのか。 - “ニセ戦場カメラマン”が世界のメディアをだますことができた理由
大手メディアに写真を掲載する「戦場フォトグラファー」のエドゥアルド・マルティンス。実は名前から職業まで全て捏造だったのである。この事件は、世界中のプロのフォトグラフィー業界が現在抱えている問題を浮き彫りにしたといえる。 - 「ゲリラ・ジャーナリスト」が日本に上陸する日
米国で「ゲリラ・ジャーナリスト」が話題になっていることをご存じだろうか。ジャーナリストの手法とは呼べない無茶苦茶なやり方で、大手メディアの記者などを標的にして、トンデモな映像を公開している。もしゲリラ・ジャーナリストが日本に上陸したら……。 - 「才能ある貧乏」と「無能な金持ち」はどちらが成功する? 浮かび上がった不都合な事実
遺伝子から子供の才能を調査し、育つ家庭の裕福度によって学歴がどう変わるかを明らかにした研究が話題になっている。「才能」と「環境」のどちらが将来を決めるのか。その結果から、現代社会の問題も浮き彫りになった。 - だから世界的に「メディア不信」が広がっている
日本のネット界隈で「マスゴミ」という言葉がすっかり定着した。さまざまな調査結果をみると、既存メディアへの信頼度が低下しているようだが、海外メディアはどうなのか。日本と同じように……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.