激変する通信業界、「スピーディーな課金」を実現する新たなパッケージ現る

再編や新サービスの発表が相次ぐ通信業界では、課金漏れが共通の課題になっている。ビトリアは、サービス展開から現金化までのプロセスをパッケージ化した新製品を市場に投入した。

» 2004年06月09日 17時19分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 先日、ソフトバンクが日本テレコムを買収すると発表し、通信業界にも再編の波が訪れることを予感させた。こうした大型合併だけでなく、ブロードバンド化の進展が道半ばである現在、通信業界では、新サービスが日々投入されている。

 例えば、同業界の中心企業の1つであるNTTコミュニケーションズだけを取ってみても、5月20日に音楽配信サービス「OCN MUSIC STORE」、同6日にはOCN会員向けにウイルス対策ソフトを提供すると発表した。さらに、業界全体では、5月24日にパワードコムが「Powered Ethernet」のアクセスメニューにADSL方式を追加、英会話のNOVAと東京電力など3社がFTTHを利用した「お茶の間留学」提供で業務提携するなど、数えれば切りがないほど。

 ここで、1つ懸念事項がある。調査会社のガートナーは「テレコムプロバイダー各社によって提供されるサービス全体の2〜5%が、バックオフィスの不備などによって課金されていない。」と報告する。課金システムに非効率性が存在しているのだ。

 一般に、通信サービスを実現するには、課金、注文管理、顧客データベース、CRM、料金プラン、品質保証監視など複数のシステムが関与する。こうしたシステム間には互換性がないことが多く、いわゆるマニュアル作業が多く介在することになる。結果的に、人件費増、請求漏れ、サービスの質的な低下とそれに伴う顧客離れ、新製品展開の遅れなど、企業の収益を圧迫するさまざまな事態を誘発することになる。さらに、社外の複数のサプライヤーとの情報連携を前提とするサービスでは状況はさらに複雑なものになってくる。

「課金の自動化」をパッケージング

 そこで、通信業界の「課金プロセスの自動化」という命題に目をつけたのが、EAI(Enterprise Application Integration)ツールの提供で知られるビトリア・テクノロジーだ。同社の中畑恒夫社長は、「現金化までのプロセスを標準化し、可視化することでコストの大幅削減を実現できる」と話す。

中畑社長。日本アイ・ビー・エム、日本チボリシステムズ社長を経て2001年に社長に就任した。

 同社は、通信業界の注文管理プロセスの自動化を実現する製品として新たに「Vitria OrderAccelerator」(VOA)を投入した。これは、同社が既にEAIツールとして広く展開している「Business Ware」のアドオン製品という位置づけ。Business Wareは既に500社以上の導入実績があり、日本でも、日産自動車やサントリー、NTTコミュニケーションズなど、海外でも、AT&TやVerizon、Deutshe Bankなどがユーザーとして挙げられている。

 新製品の特徴は、情報通信サービスの国際標準化団体「Telemanagement Forum」が次世代の通信プロセス規格として策定した「eTOM(Enhanced Telecom Operations)」に準拠していること。海外では3月に、スペインのサービスプロバイダの1つが同製品を採用したことが明らかにされており、サービス提供の高速化、収益向上などを実現したという。

 アーキテクチャの基盤は、受注処理や料金プラン、課金請求といったシステムの違いを吸収するための「共通用語ライブラリー」。その上で、営業、運用、サポート、経理財務といった一連のビジネスプロセス全体をカバーするパッケージシステムのような形で、機能が提供される。

 新規顧客サービスの追加や削除、サービスの中断、再開、受注オーダーのキャンセルといった業務プロセスが、いわゆるベストプラクティスの形で提供されることにより、ユーザー企業にとってのシステム開発や保守運用にかかる負担を大幅に軽減できるという。EAIベンダーとしての同社の技術力を上手に生かした製品展開と言っていい。

 自前でこうしたシステムを構築する場合、システム間の連携や統合に手間がかかるだけでなく、仕様ミスによる手戻り、バグの発生など、数多くの不確定要素を残すことになり、時間やコストへの負担増が予想される。

 中畑氏は、VOAのビジネス面での効果について、「未請求サービスの削減、人件費の削減、受注サービスの迅速化による顧客満足度の向上、ビジネスの変化への柔軟な対応」などを挙げる。VOAでもカスタム開発は可能だが、従来型の開発スタイルのように、ビジネス基盤が「ハードコード」されることにより、プロセスが硬直化するという問題点にも対応できるとしている。

 通信業界の課金プロセスのシステム化は、将来的に見ても巨大な市場であり、VOAのほか、各ベンダーの今後の対応に注目が集まる。

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