米裁判所、電子投票システムに「不信任票」

「信頼性が改善されるまで、電子投票システムの使用は不許可」とするカリフォルニア州令が支持された。秋の大統領選を控え、「セキュアな選挙に向けた勝利」とEFFは評価している。(IDG)

» 2004年07月08日 14時08分 公開
[IDG Japan]
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 米連邦裁判所の判事は7月7日、カリフォルニア州のケビン・シェリー州務長官が4月30日に下した、タッチスクリーン式の投票機の使用許可取り消しと、投票機のベンダーが特定のセキュリティ要件を満たすまでは使用許可を出さないとの指令を支持した。この要件には、「投票者が確認できる紙の監査証跡(VVPAT)」の発行などが含まれる。

 この判決は、ベナビデス対シェリー訴訟で下されたもの。この訴訟は障害者支援団体とカルフォルニア州のリバーサイド、サンベルナルディオ、カーン、プルーマスの4郡が、シェリー州務長官によるVVPATの要件と直接記録式(DRE)投票システムの使用不許可に反対して起こした。

 原告側は、こうした投票機を禁止することは、実質的に視覚障害者や身体障害者から投票権を奪うことになると申し立てた。

 カリフォルニア中央地区連邦地裁が発行した文書の中で、フローレンス−マリー・クーパー判事は、「提出された証拠は、DREの排除が障害者に対して差別的な影響をもたらすという結論を支持しない」と述べている。

 同判事はまた、州務長官の「DREの信頼性が改善されるまで使用を停止するとの決定は、確かに理にかなったものであり、州民の投票権を守るためのものだ」とし、また紙の監査証跡の義務付けは、投票の正確さを保証するという州務長官の義務に沿ったものだと語っている。

 電子フロンティア財団(EFF)の法務ディレクター、シンディ・コーン氏は、今回の判決は「歴史的」だとしている。

 「裁判所はあいまいさのない明確な言葉で、電子投票機での紙の監査証跡の発行を要求するのは、投票結果の正確さを保証する義務に沿うと述べた。これはセキュアな選挙に向けた大きな勝利だ」(コーン氏)

 「カリフォルニア州とそのほかの州の有権者にとって素晴らしいニュースだ」とカリフォルニア州有権者財団(CalVoter)のキム・アレクサンダー会長は語る。

 特にクーパー判事の米国障害者法(ADA)に関する判断は、電子投票に関して「全米的な影響を及ぼす」と同氏。「この歴史的判決はカリフォルニア州法と、ADAや2002年の米国投票促進法(HAVA)といった連邦法を考慮に入れたものだ。これは全米の州に影響するだろう」

 今回の判決は、州や自治体の選挙委員が、11月までに各州の電子投票システムの信頼性、正確さ、不正防止を確保しようと準備を急ぐ中で下された。

 2週間前、ニューヨーク大学ロースクールのブレナンセンターとLeadership Conference on Civil Rights(LCCR)は、タッチスクリーン式DRE投票システムのセキュリティと信頼性を認証するための戦略を概説したITセキュリティパネルによる報告書を発表した。秋の大統領選において電子投票システムが使われる選挙区の有権者は、登録有権者の約30%を占める。

 5月にElection Assistance Commission(EAC)で行われた証言では、セキュリティ研究者らが、紙の監査証跡がないと、秋に電子投票機を使う5000万人の有権者が、自身の投票が正しく記録されたかどうかを知る手だてがないと主張した。また研究者らは、こうしたシステムで使われているコード基盤は非常に複雑なので、選挙委員はシステムが選挙結果を操作するために作られた悪質なコードの影響を受けないという確信を持てないとも証言した。

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