スパムはもう強敵ではない?

法的・技術的なスパム対策はかなりの進歩を遂げ、大きな効果をもたらしているようだ。今年のSpam Conferenceは空席が目立ち、参加者にもあまりせっぱ詰まった感じがなかった。(IDG)

» 2005年01月26日 16時52分 公開
[IDG Japan]
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 スパムをめぐる戦いは決して終わってはいないが、先週マサチューセッツ工科大(MIT)に集まった反スパム活動家の間では、法律・技術の両面の進歩により、バイアグラ販売業者やナイジェリアの王女は形勢不利になったとの見方が高まっていた。

 年次カンファレンスSpam Conferenceでは、スパムがいずれ完全に排除されるとか、あるいはスパムの量が減っているとの意見は見られなかった。実際、反スパムニュースレターを執筆しているジョン・グラハム−カミング氏は、自身が行ったオンライン調査で、約5000人の回答者が受け取った電子メールのうち、77%がスパムであることが示されたと報告した。

 しかし、100人を超える反スパム連合のメンバーにとって、この会合の幾つかのプレゼンテーションは心励まされるものだった。

 法律の面では、Internet Law Groupの創設パートナー、ジョン・プレード氏が、ノースカロライナ州のスパム業者ジェレミー・ジェインズ被告が11月にバージニア州で懲役9年を言い渡されたと報告、聴衆から歓声が上がった。ジェインズ被告はSpamhausのRegister of Known Spam Operations(Rokso)リストの8番目に名前が挙がっていたスパム業者だ。同被告は「RoboMail」というプログラムを介してAmerica Online(AOL)会員に大量のスパムを送信したとして有罪判決を受けた。AOLはバージニア州に本拠を置いている。

 ジェインズ被告は米国で初めて、スパムによる重犯罪で有罪判決を受けた人物だ。この判決は、詐欺的なメッセージの送信件数に応じて罰を重くする、厳しいバージニア州法に基づいている。同州検事総長のジェリー・キルゴア氏は手を緩めず、昨年5月にはフォートワースの女性を逮捕し、スパム送信容疑で起訴した。その公判はまだ始まっていない。

 「今スパム業者たちは、次は自分ではないかと怯えきっている。確実にそう言える」とプレード氏は語り、厳格な法律は方程式の一部でしかないと言い添えた。「技術と法律の融合が解決策だ」

 技術の面では、ベイジアン・ノイズリダクション、辞書を使った対策、スパム識別技術の集約に関するプレゼンの中で、スパムフィルターはほぼ期待通りのレベルに達し、かなり良くなっているというのが一般的な見方だった。

 「概して、われわれはスパムをうまく人々の受信ボックスから閉め出している」とスパムフィルタリング企業MailFrontierのプロダクトマネジャー、アンドリュー・クレイン氏。現在の(フィルタリングの)成功率は97〜98%で、「これ以上大きく高められるかどうか分からない」という。どの製品でもスパムを全滅させられないだろうが、今の製品で「受け入れられるレベル」にスパムを減らせると同氏は語った。

 Electric Cloudの主任科学者も務めるグラハム−カミング氏は、たいていの製品で使われているベイジアンフィルタリングは、ほとんどのユーザーのスパム問題を効果的に解決すると付け加えた。「実際、これらの技術は極めてうまく機能している」

 UnspamのCEO(最高経営責任者)マシュー・プリンス氏は、「Project Honeypot」によりスパム業者に対して新たな攻撃を開始したと語った。連邦スパム規制法CAN-SPAMでは、スパム送信のために電子メールアドレスを収集する行為は違法とされているため、プリンス氏は世界中から、自分のサイトにおとりのメールアドレスを仕掛けてくれるボランティアを募っている。これらおとりのアドレスを追跡して、アドレスを収集している人物を捕まえることが狙いだ。

 プレゼンターたちは、法的・技術的なスパム対策に対する自信を見せたものの、人間の行動を正す方が難しいことは認めていた。悪名高いスパム業者を紹介する「Spam King」という本を書いたブライアン・マクウィリアムズ氏は、スパムを遮断して別のフォルダに捨てることでは、ユーザーがスパムを拾い出して、その送信者からものを買うのを防ぐことにならないと主張した。

 グラハム−カミング氏によると、同氏が行った調査では、回答者の1%、55歳以上の回答者の2%が、既知のスパム業者から商品を買ったことがあると答えた。数百万通のメールを送った場合は、それだけでも十分な利益になる。

 今回のSpam Conferenceは3回目であり、おそらく最後となるだろう。MITキャンパスのBuilding 29の聴衆席は過去2年は満杯だったが、今年はかなり空席があった。

 「今年はせっぱ詰まった感じがあまりなかった」と話すのは反スパム活動家のポール・グラハム氏。同氏は2002年に、ベイジアンフィルターにつながる論文を書いた功績を持つ。同氏は「技術的な問題はかなり解決に近づいている」とし、最近の法的措置はスパム業者に「萎縮効果」をもたらしていると語った。

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