「IPアドレスや時間といった発信者情報の把握、供与といった行為自体が通信の秘密に抵触する恐れがあるし、把握した発信者情報をログと照合してユーザーを特定する行為も同様だ」(甲田氏)。また、一連の作業を経て特定したスパマーの契約解除を行う際には「それが本当に正しい相手なのか、そのことを誰が担保するのか」という点も課題だという。
またスパマーの中には、あるISPを解約されてもすぐ別のISPに加入して迷惑メールを送り続ける輩もいる。この手合いに対し「ISP間でスパマーに関する情報を共有して止められえないかと期待しているが、これも通信の秘密への抵触が懸念される。また、スパマーの個人情報、プライバシーを侵害するおそれもある」(甲田氏)。
この点について総務省の渋谷氏は、「(こうした一種のブラックリストの)必要性は理解している」とコメント。既に携帯電話事業者が行っている不払い者の情報共有と同じ枠組みが実現できないか、議論している段階だとした。
ただ、甲田氏が指摘したとおり、スパマーに関する情報の正確性をどう担保するかという問題に加え、何千社と存在するISPの間でどのように情報を共有していくかといった課題は残る。「通信の秘密に関する議論を整理したうえでもなお、実効上どこまでできるかという部分に難しさがある」(渋谷氏)としている。
また最後に、コーディネーターを務めた慶應義塾大学の村井純教授が発言し、迷惑メール問題は「メールというツールが生きるか死ぬかという問題にもなってきている」と指摘。これを解決するには、これまでのインターネットの世界がそうだったように、民間が主導しそれを行政がサポートするという形で力を合わせていく必要があると述べた。同時に、「こうした問題そのものが広く知られ、認識や理解が高まることも必要。つまり教育が大事だ」と述べ、社会全体の迷惑メールに対するインテリジェンスを上げていくことも重要だとしている。
なお、同カンファレンスで行われた一連の発表の資料は、インターネット協会のWebサイトでも公開されている。
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