作ってる最中に言われてもねぇ「コンセント、抜けてます。」

この記事は秀和システム社発刊の書籍『コンセント、抜けてます。』の一部を許可を得て転載しています(特集:顧客満足度ナンバーワンSEの条件)

» 2005年05月30日 10時12分 公開
[栗林 彰,秀和システム]
秀和システム

 ありがちといえばありがちですが、設計段階をはるかに過ぎて実装の段階になってからあーだこーだと仕様を変えられることがあります。向こうはそれがどれだけ大変なのか理解してないようです。

 「いやー、悪いんだけどさ、ここちょっとこうしてくれない?」クライアントはまったく素人さんですから、それがどのくらい基本設計に影響を及ぼすのか全然理解していません。お好み焼きを作り始めてから、「やっぱりうどんにしてくれ」みたいなことを平気でいうわけです。

 「同じ小麦粉なんだからたいした変更じゃない」と思っているらしいです。そこで、「それはかなり設計を変えないといけないんですが、どうしてもやりますか?」と一応は言うものの、だいたいは押し切られます。しょうがないと作業をやりなおし、またゼロから作り始めるわけですが、そうすると今度は最初に設定した納期に間に合わなくなります。クライアントは「ちょっとした変更」だから納期が伸びるとしてもたいしたことはないと思っているわけですが、SE 側としてはゼロからやり直しになるわけですから、いままでにかかった工数をさらにまたやり直すくらいの日数が必要になります。

 加えて、もめるのが支払いの問題です。メーカーと下請けの間では仕様変更は別途予算が発生するのが常識なのですが、一般人相手の場合はそういう常識が通用しません。

 最初にきちんと決めておいたとしても、実際そのときになるとだめなのです。そもそもクライアントは自分の要求が「たいしたことない仕様変更」だと思い込んでいますので、「あの程度の変更でそんな金額請求するな」とケンカになります。「基本設計からやり直しだから、いままでの2カ月分を支払ってもらったうえで、さらに2カ月延期になります」とかいうとだいたい頭から湯気をだして怒ります。

 そのうえ「そんな高いうえに遅くなるんだったら最初のままでいい」とか言い出します。もうこっちは設計変更しちゃって作業を開始してしまっているので、いまさら言われても困りますという状況に陥ります。結局どっちかが折れるしかないのですが、だいたいはSE側が「仕様変更に伴う別料金を勉強したうえで、納期はできるだけ短縮」という状態に押し込まれます。

 ムチャな仕様変更のあげく値切られた上に納期はぎりぎり。そんなこんなで追い込まれたSEが鬱病になったり自殺する例も珍しくはありません。いやならやめりゃいいじゃんと思われそうですが、いまの時代仕事を蹴るとなかなか次がなくて辛いのです。

わがままな 仕様変更 鬱のもと

栗林 彰(くりばやし あきら)

もちろんペンネーム。都内に生息。年齢不詳。性別不明。むかーしアングラ関係の本を書いていたが、しばらく引退。ここ最近ちょろちょろとまた活動中。前職はSEとのうわさがあるが、本人は否定。

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