米国土安保省のITシステムは「災害対策が不十分」

テロ対策のために設置された米国土安全保障省だが、そのITシステムはバックアップ体制に不備があるようだ。(IDG)

» 2005年06月10日 19時42分 公開
[IDG Japan]
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 米国土安全保障省のIT運用は、大災害発生時の復旧の備えが概して不十分であることが、監査により明らかになった。同省監査局が6月8日発表した報告書によれば、同省のIT施設の80%近くで、データ復旧サイトの機能に不備がある。

 監査報告書には、「国土安保省の重要なITシステムが災害後に復旧できなければ、本質的な任務の遂行に弊害が生じるだろう」と記載されている。

 監査官が調査を行った19施設のうち15施設で、予備の復旧サイトへのデータのバックアップが完全でなかった。残る4つの施設では、「重要なITシステムの復旧に悪影響」を与えそうな問題が発見されたという。

 こうした不具合が原因で、米国では災害後、空港での出入国審査の混乱や、政府災害復旧支援金の交付処理の遅れが起きる恐れがあるという。報告書はまた、ITシステムの問題によって国内外の物流が停滞する可能性を警告している。

 報告書は、省内で災害復旧予算を増やし、災害復旧計画にもっと重点を置くよう勧告している。監査で調べた31の災害復旧計画書類のうち25の書類に「欠陥」があったという。

 国土安保省の広報官ラリー・オーラスキー氏によると、同省のCIO(最高情報責任者)オフィスはこの勧告に同意しており、また省内22の機関が災害対策の改善を進めている。しかし、同省管轄下の情報システムは多種多様で、その作業にはある程度時間がかかるという。「国土安保省は急激に寄せ集められたコングロマリットなのだ。今ようやく、あるべきところへと進むためのすべてが整った段階だ」とオーラスキー氏。

 同氏は、いつ同省が今回の報告書の勧告に従えるか明言することはできなかったが、9月末までにオンラインになる予定の、ミシシッピ州南部のステニス宇宙センターに新たに統合される同省データセンターが状況を改善するだろうとしている。「これが稼働を始めれば、今回の報告書で指摘された問題の多くに対処できるだろう」と同氏。

 国土安保省は2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに設置された。米国をテロから守り、人為的または自然による災害の打撃を軽減することを任務とする。同省には、沿岸警備隊や移民帰化局、連邦緊急事態管理庁などの機関が属している。

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