x64版Windowsは徐々に普及する?x64版Windowsへの移行は急がば回れ? 

x64版Windowsへの移行について考える短期連載。最終回は、x64版Windowsへの移行にベストなタイミングはいつなのかを考える(特集:64ビットコンピューティング最前線)。

» 2005年07月28日 00時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 現時点で量販店に並ぶPCを見ても、x64版のWindowsを搭載したモデルは見当たらない。サーバにしても、x64版Windowsを選択することができる製品は決して多くないのが実情だ。しかし、x64版の正式リリースからまだ3カ月ほどしか経過していないのだから、これも致し方ないところだろう。現状は、デバイスドライバやアプリケーションの整備が始まった段階であり、普及はまさにこれからといっていい。マイクロソフト自身がパッケージをリリースしていないくらいだから、クライアントへの普及はまだ相当時間がかかるかもしれないが、サーバについては対応版のSQL Serverなどがリリースされることもあり、1〜2年で利用する環境は整うのではないかと思われる。

 逆にx64版の普及を促す要因として、ハードウェアの対応が着実に進んでいることが挙げられる。すでにインテルはバリューセグメントのCeleron Dプロセッサについて、64ビット拡張(EM64T)をサポートした製品の販売を開始した。これを受け、AMDもSocket 754対応のSempronプロセッサについて、64ビット拡張をサポートすることを表明した。現在、まったく64ビット化が進んでいないのはインテルのモバイルプロセッサだが、これも開発コード名「Yonah(ヨナ)」以降のプロセッサでは変わると思われる。おそらくこの1年で、ローエンドからハイエンドまで、プロセッサ側の64ビット拡張対応が完了するハズだ。しかも、64ビット拡張の提供は基本的に無償であり、64ビット拡張が付与されることによる価格の引き上げはない。

 もう1つ64ビット拡張を推進する要因となるのがメモリ(DRAM)の世代交代だ。現在、市販されているDIMMで主流となっているのは512MビットDRAMチップを用いたものだが、すでに1GビットDRAMチップによるDIMMのサンプル出荷が始まっている。1GビットDRAMの世代になれば、現在は極めて高価な2GバイトDIMMの価格も大幅に下がるものと思われる。そうなればシステムが4Gバイトを越えるメモリを搭載することも珍しくなくなるだろう。連載第1回で触れたとおり、4Gバイトを越える物理メモリを32ビットOSでサポートすることは可能だが、有効に活用するという点では64ビットOSにはとうてい及ばない。ハードウェアの世代交代に先導される形で、x64版Windowsも本格的な導入期を迎えることになるハズだ。

 サーバなどでは、ユーザーエリアが広がることで既存の32ビットアプリケーションであっても性能が向上する場合があるが、やはり対応アプリケーションがそろってこそ64ビット化のメリットが発揮される。また、デバイスドライバなどがそろっていないことから、利用可能な周辺機器や拡張カードが制限される可能性もある。思わぬ32ビットアプリケーションが動かないといった事態にも遭遇するだろう。64ビット版Internet Explorer 6ではプラグインやJava VMが動作せず、Webアプリケーションが利用できないといった問題も起きる。もちろんx64版Windowsには、32ビット版Internet Explorer(32ビット互換を実現する一種の仮想OS「WOW64」上で動作する)が用意されており、32ビットのプラグインなどを動作させることが可能だ。しかし接続先に応じて、64ビットと32ビットのInternet Explorerを切り替えないとならないため、使い勝手は非常に悪い。つまり現時点で急いでx64版Windowsを導入するメリットはそれほどない。64ビット環境が整うのを見ながら、用途に合わせて64ビットへの移行を進めるのがよい。

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