情報を「コピペ」で使う危うさに対応するソフトウェア

製品開発システムの提供で知られる米PTCはエンタープライズパブリッシングソフトウェアを提供するArbortextを買収すると発表した。

» 2005年11月07日 21時44分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 製品開発システムの提供で知られる米PTCは7月に、エンタープライズパブリッシングソフトウェアを提供するArbortextを買収したと発表した。Arbortextは、企業が蓄積する大量の文書を管理し、最新情報の的確な配信や、自動化を可能にするソフトウェアとなっている。

 来日した同社のセールス担当の副社長、マーク・ベンファー氏は、「1人の従業員が、情報を探したり、再加工したり、再利用したりするのに浪費する時間は1週間でおよそ8時間に上る」という米Gartnerの調査結果を引用し、企業における情報配信に無駄が存在していることを強調する。

世界的な製造業も多い日本市場には特にArbortextの製品がなじむと話すベンファー氏

 例えば、製造業における一般的な製品開発プロジェクトにおいては、調達、製造、販売、マーケティング、外部のサプライヤー、デザイナー、顧客がそれぞれ利用するさまざまな情報システムが存在している。それを全体の“システム”として見た場合、さまざまな場面に情報の寸断や、誤った情報の流通などの問題が存在しているという。

 多くの企業コンテンツはシングルソースから参照されるのではなく、コピーされて再利用されることが多いという。そのため、元となるデータが変更された場合に、関連するデータを扱うユーザーに迅速かつ正確に変更内容を伝えるためには、把握しきれていない複数の場所への変更操作が必要になり、困難を極めることになる。

 そこで、Arbortextが提供するのが「動的パブリッシング」機能だ。XMLの特性をうまく生かすことにより、情報の重複をなくし、パブリッシング処理の合理化、自動化を図る。例えば、E3(Epic E-Content Engine)は、XMLデータを自動的にWeb、印刷物、PDF、HTMLなど、さまざまな形式に変換するサーバだ。E3を導入することにより、データベースに直接問い合わせて情報を取得し、それをユーザーのニーズに合わせてカスタマイズし、オンデマンドに配信することが可能になる。

 Arbortextのユーザーは主に製造業。日本企業でも、トヨタ自動車、本田技研、日立製作所、三共などの名前が挙がっている。また、グローバル企業のCaterpillarは、200カ国に300万件の文書を保持し、14カ国語で提供しなくてはならないという。そこで、Arbortextを導入したところ、情報配信のプロセスが簡素化しただけでなく、コストも半減した。また、SAPは、自社のグローバルトレーニングプラットフォームにArbortextを採用しており、カスタムトレーニングの作成に生かしている。

 製品開発において情報を一元的に管理し、配信することは、生産プロセスを効率化するだけでなく、ミスを未然に防ぐなど、さまざまなメリットの享受につながりそうだ。

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