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» 2006年01月11日 17時00分 UPDATE

教えます、金融機関との付き合い方

昨今の銀行や証券会社の経営破綻、貸し渋りといった金融機関をめぐる環境変化を踏まえ、金融機関との付き合い方を考えてみます。

[第一法規]

lalalaw当社は、従業員150名ほどの食材輸入商社です。従来は、輸入代金の決済や流通倉庫建設資金の借入などの銀行取引を中心として金融機関と付き合いをしてきました。
 昨今の大手を含む銀行や証券会社の経営破綻、貸し渋りといった金融機関をめぐる環境変化を見ていると、銀行をはじめとした金融機関との付き合い方も今後は変わらざるを得ないようです。
 経理部長として、どのような点に気をつけていけばよいのでしょうか。


lalalaw銀行をはじめとして金融機関をめぐる環境は、依然として厳しいものがあります。従来のように、相応の取引実績と担保さえあれば借入ができた時代と異なり、「貸し渋り」への対応が必要となっています。

 さらに、余資や年金資産の運用に当たっては、自己の責任において、金融機関が破綻した場合のリスクを念頭に置かなければなりません。

解説

1.厳しい環境下にある金融機関

 平成9年秋の大手証券会社や大手都市銀行の経営破綻に象徴されるように、「金融機関は潰れない」という話は過去のものとなりました。

 その後も不良債権の処理、資金調達コストと運用利益の差額である利ざやの縮小による経営圧迫など、金融機関を取り巻く環境には依然厳しいものがあります。

 経理部長、財務部長としては、金融機関が置かれている状況を把握した上で、付き合いを考えなくてはならない時代となっています。

2.貸し渋りとは

 運転資金や設備投資資金の調達を銀行に頼っている多くの中堅企業にとって、最も深刻な問題が「貸し渋り」です。

 「貸し渋り」は、銀行、信用金庫や信用組合などの金融機関の健全度を意味する「自己資本比率」の改善のために生じたと考えられます。すなわち、容易にはできない自己資本の増強に代わり、「自己資本比率」の分母である総資産の縮小、とりわけ、貸出金の回収や新規貸出の抑制により総資産を圧縮する傾向が見受けられるようになりました。これが「貸し渋り」です。

 「貸し渋り」は、銀行などが貸し出しに際してより慎重な審査を行っていることの結果とも言えます。しかし、借手側の努力だけでは解決しない問題と考えるのではなく、対応策として以下の事項を検討してみましょう。

  • 会社のスリム化を行うこと

 滞留売掛金や滞留在庫など、会社にとって無駄となっている資産を洗い出して処分を図ります。これにより眠ったままの資金を有効に活用できます。

  • 会社にとって本当に必要な資金はどれくらいか把握すること

 前記の会社のスリム化と関係しますが、簡単なキャッシュフロー計算書を作成するだけでも資金の循環が今まで以上に明確になり、資金の調達や運用で問題となっている点が判明します。

  1. 担保だけに頼らず、会社の強みを把握し、銀行に積極的にアピールすること
  2. 当面の資金繰り対策として、公的金融機関の利用を考えること

 信用保証協会、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫といった公的な制度、機関の利用を検討することも検討します。いざという時の資金調達の一手段となります。

3.ペイオフとは

 もう一つ銀行をめぐる問題として忘れてはならないのが「ペイオフ制度」です。

 「ペイオフ」とは、預金(郵便局が取り扱っているのは貯金であり、このペイオフの対象とはなっていません)を取り扱う銀行などの金融機関が、万が一経営破綻に陥り預金などの払い戻しが不能となった場合には、その金融機関に代わり預金保険機構が、一金融機関ごとに一預金者当たり元本1000万円とその利息を限度として払い戻しに応じる制度です。

 ペイオフは、2005年4月1日に全面解禁、すなわち万一の場合には発動されることになりました。

 ここで、留意すべき点は以下の通りです。

  • 「金融機関は潰れない」という過去の常識は捨て、一つの企業として取引金融機関の信用力を判断すること。
  • ペイオフにより保護される金融商品の範囲を理解しておくこと

 銀行で扱っている金融商品すべてが預金保険の対象となっているわけではありません。どの金融商品が預金保険の対象となるか十分に注意する必要があります。

 保護の対象となる預金などについては、1000万円までの元本とその利息は払い戻しが保証され、元本の残額やその利息は、破綻した金融機関の財産状況に応じて払い戻しがなされることが基本ですが、企業の決済資金を保護する目的から保証対象について、経過措置も設けられているため、その措置の期限にも注意が必要です。

4.適格退職年金をめぐる問題

 適格退職年金に関する問題も重要です。適格退職年金契約にはさまざまな形態があり、また、契約先が、信託銀行なのか生命保険会社なのかにより状況が変わりますので、ここでは一般的に留意すべき事項を説明します。

  • 年金資産の積立不足額を把握する

 年金をめぐる問題で昨今大きくクローズアップされているのが、年金資産の積立不足の問題です。

 積立不足とは、実際に積立されている年金資産が、将来の退職に伴う年金の支払いに備えて積立しておくべき金額を下回っている状態を意味します。

 この積立不足は、実際の運用利回りが予定運用利回りを下回っていること、予定死亡率と実際死亡率との差、さらに毎年の昇給により積立すべき金額が増大することによって生じます。

 積立不足額がある場合には、将来の年金掛金の増加により穴埋めするか、将来の年金支給額を予定より減額するかの対応が必要となります。

  • 運用先の運用実績や信用力を調査しておくこと

 現在、年金資産の運用は、生命保険会社、信託銀行、投資顧問会社が行うこととされています。

 運用状況の悪化、さらには、運用を受託された機関そのものが破綻している例が見受けられます。運用機関任せではなく、自己の責任において、運用先の運用実績や信用力を調査し、場合によっては、運用を委託する機関の変更も検討する必要があるでしょう。

  • 年金契約更改の際、予定利回りや毎月の年金掛金額の変更があり得ること

 多くの年金契約では、実際の運用利回りが予定利回りを下回っている状態です。このため、契約更新の際には、予定利回りの引き下げや年金掛金増額の話が、契約先の信託銀行や生命保険会社からあると考えていいでしょう。

 現在の契約の約款をもう一度読んでポイントを理解するとともに、新しい契約内容が、会社の資金負担や退職年金を受け取る従業員などにどのような影響をもたらすのか、事前に検討しておくことが重要となります。

ワンポイント:担保主義から収益力重視主義へ

 銀行が企業に貸し出しを行う際には、通常担保を取ります。銀行は、従来同様に担保を重視することには変わりがありませんが、担保そのものへの見方が少し変化しているようです。

 バブル全盛時には、不動産価格が右肩上がりで上昇し続けたために、土地が「幾らで売れるか」といった観点から担保価値を把握していましたが、ここ数年の不動産市況の低迷で、かなり固めの評価を行う銀行が多くなり、借入側が希望する金額での借入ができないケースも見られます。

 銀行は、その担保から「どのくらいの利益が獲得できるのか」といった点も重視しているようです。

 これは、銀行が借り手である企業の評価をする際にも言えることで、従来から審査の対象となっている「どのくらいの担保や含み資産があるか」という点とともに「企業としての収益力・成長性はどのくらいか」という点を審査のポイントとしています。

 会社の経理、財務担当として、他社と比較しての強み、ノウハウや成長性などを見直して、自社の収益力、成長力について銀行などに説明できるだけの準備をしておく必要があると言えます。

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