シトリックスを後押しするのは「セキュリティ」「モバイル」、そして「日本版SOX法」

シトリックス・システムズ・ジャパンは1月24日、2006年度の戦略に関する説明会を開催し、3つの分野が同社のビジネスを後押しするとした。

» 2006年01月24日 23時22分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは1月24日、2006年度の戦略に関する説明会を開催した。この中で同社代表取締役社長の大古俊輔氏は、個人情報保護法対応に代表されるセキュリティ上のニーズに加え、日本版SOX法への対応やモバイル環境の拡大が同社のビジネスを牽引するとの見方を示した。

 大古氏によるとシトリックスの顧客数は、昨年の9000社から、2005年度は3000社増えて1万2000社に達した。2005年4月の個人情報保護法の全面施行を機にセキュリティに対するニーズが高まり、より根本的な情報漏えい対策としてサーバ側に情報を集約するシンクライアントソリューションが注目を集めた。「Citrix Presentation Server」を中核とした「Citrix Access Suite」はその流れに乗った形だ。

 しかし、本格的な導入はむしろこれからだと大古氏。「企業トップ層がセキュリティ対策の必要性を認識し、技術を検証、比較して実装に入ったのば、実際には2005年の秋から初冬にかけて」(同氏)。2006年度の予算計画にシトリックス製品群を組み入れている企業も多いとし、セキュリティ強化を目的としたCitrix Access Suiteの導入は2006年度も続くとの見通しを示した。

大古氏 シトリックス・システムズ・ジャパン代表取締役社長の大古俊輔氏

 モバイル/ワイヤレス環境については、第三世代の携帯電話や無線サービスの普及によって、「これまで技術的、あるいはコスト的な面で実現が難しかった『常に情報につながっていたい』というニーズが満たせるインフラができた」と大古氏。そうした環境向けのクライアントソフトを提供していく。

 既に2005年11月のiForumにおいて、「FOMA M1000」およびウィルコムの「W-ZERO3」向けのクライアントモジュールの開発を発表しているが、間もなく正式にリリースできる見込みという。処理はサーバ側で行うため容量の大きいファイルでもストレスなく利用できること、PC同様、万一端末を紛失したり、盗難に遭った場合でも情報漏えいの危険性がないことなどがメリットだ。

モバイル向けモジュール ウィルコムの「W-ZERO3」向けのクライアントモジュールのデモ。Citrix Presentation Serverにアクセスしてエクスプローラを開いている

 もう1つのドライバは、IT産業全体にブームを起こしつつある日本版SOX法への対応だ。大古氏は「ITセキュリティは日本版SOX法のサブセット」とし、セキュリティ対策を中心に、内部統制を支援するための取り組みを進めていくとした。

 具体的な展開内容は今後パートナーと連携しつつ固めていく方針だが、たとえばCitrix Presentation Serverやシングルサインオン製品の「Citrix Password Manager」が持つ一元的なアクセス管理機能を監査の観点から利用する、というアプローチが考えられる。さらに、SOX法/日本版SOX法対応の一環として、ERPなどのアプリケーションの導入拡大が見込まれる。そうしたアプリケーションを最適化するプラットフォームとしてシトリックス製品を組み合わせていくシナリオもあるという。

 並行して、SSL VPN製品に続く製品ポートフォリオの拡大にも努める。中でも重視しているのは、昨年買収したNetScalerの製品だ。

 「Citrix NetScaler」は負荷分散や圧縮、トランザクションの最適化といったテクノロジを組み合わせ、Webアプリケーションのレスポンスを高速化するとともに、セキュリティ機能を提供するハードウェア製品である。シトリックスではNetScalerを、今後利用が拡大するWebアプリケーション配信を最適化するツールと位置付け、専門部隊の設置をはじめとする販売体制を整備を進める。

 「顧客からすれば、クライアント/サーバ型システムだけ、あるいはWebアプリケーションだけということはない。Web系とノンWeb系は今後も共存していくだろう。これをいかに最適化していくかが課題」と大古氏は述べ、「Citrix NetScalerをAccess Suiteに次ぐ第二の柱に育てたい」とした。

 併せて、製品サービスサポート体制の強化、スキームの変更にも取り組み、2005年度に続き「売上高で、前年度比20%以上の成長を継続していきたい」(同氏)という。

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