Office特許侵害でパッチ対応、EUによる罰金警告――MS訴訟を巡る最新動向(1/2 ページ)

特許侵害訴訟の判決を受け、MicrosoftはOfficeの新規インストールにパッチの適用をユーザーに要請している。このほかにも、同社は現在35件以上の特許関連訴訟に関わっている。またEUでは、技術文書の不備を理由に罰金警告が出されている。

» 2006年03月06日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftの訴えが退けられたOffice関連の特許侵害訴訟の裁定を受けて、同社はAccess 2003を含むOffice 2003には最新のサービスパック(Office 2003 SP2)を、Access 2002を含むOffice XPにはAccess用の修正プログラムを適用するようユーザーに求めている。同社の発表では、どちらのバージョンでも影響を受けるのは新規インストールのみで、2006年1月までにインストールされている製品については影響がないとしている。

 そのほかのMicrosoftの法規関連ニュースとしては、サーバプロトコルについて十分な内容の技術文書を適時に公開していないとして、EUが同社に1日当たり最高で200万ユーロ(約240万ドル)の罰金を科す可能性が浮上してきた。また、2件の特許訴訟を勝利のうちに収めたほか、新たに1件の特許訴訟が提起されている。同社前役員のKai-Fu Lee氏を巡るGoogleとの係争は収束した。

Office特許訴訟の決定を履行

 Microsoftとグアテマラ人で特許を主張するCarlos Amado氏との間で争われた、AccessデータベースのデータをExcelスプレッドシートに表示するための機能に関する特許侵害訴訟は、2005年6月にAmado氏側の訴えを認める判決が下された。これを受けて同社は2006年1月に、影響を受ける製品および判決に従い対応が必要になる状況について通知する電子メールをボリュームライセンスユーザーに送信している。この通知を受けたユーザーが必要な措置を行わなかった場合、このユーザーはライセンス契約に違反することになり、Microsoftの免責ポリシーの適用を受けられなくなる。これは、Microsoftソフトウェアが関係する特許侵害訴訟などの知的所有権関連の訴訟にまつわる訴訟費を免責するものだ。特許侵害製品のエンドユーザーを相手取った特許侵害訴訟が提起されることはまれだが、前例がないわけではない。

 同判決により必要となる対応は、以下のとおりである。

Accessを含まないOffice
 Accessを含まないOfficeを使用している場合は、対応は必要ない。

Access 2003を含むOffice 2003
 Access 2003を含むOffice 2003の各エディションを新規インストールする場合は、Office 2003の最新のサービスパック(SP2)を適用する必要がある(この場合の「新規」は、前述の通知を受け取るまでにインストールが完了していない場合が該当する)。しかし企業では、社内のデスクトップ構成の統一を図るケースが多いため、既存のOfficeについても最新のサービスパックを適用することが考えられる。

 SP2を適用すると、特許侵害に当たる機能が削除され、Office 2003の動作が変更される。適用前は、ExcelのワークシートとAccessデータベースをリンクし、Accessのデータを変更するとExcel側のデータにもこの変更を自動で反映させることができた。適用後はこの機能が無効になり、常にデータ変更をExcelで行うようにするか(この変更はAccessのデータに反映される)、Accessでデータを変更する場合はその都度新しいExcelファイルにデータをエクスポートしなければならない。この問題の動作を利用するシステムを運用していて、SP2を適用した場合は、当該システムを変更する必要がある。

 通知前にインストールが完了しているOffice 2003については、SP2をインストールする法的義務はない。ただし、その場合でもSP2の他のメリットを享受できるよう、同SPの適用をMicrosoftは「強く推奨」している。既存のOffice 2003ボリュームライセンスのメディアキットにはOffice 2003 SP2が含まれている。また、新たに配布されるすべてのOffice 2003(リテール版またはボリュームライセンス版)にもSP2が搭載される。

Access 2002を含むOffice XP
 Access 2002を含むOffice XPの各エディションを新規インストールする場合は、特許侵害に当たるコードとその関連機能を削除する更新プログラムをAccess 2002に適用する必要がある。既にインストールされているものについては、適用の必要はない。

提供技術文書の不備を理由にEUが罰金警告

 欧州連合(EU)の独占禁止法関連の問題を担当する欧州委員会(EC)は、Microsoftがライセンス提供を行う必要がある通信プロトコルについての技術文書が不十分であるとして、1日当たり最高200万ユーロの罰金を科すことになると警告した。

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