Office特許侵害でパッチ対応、EUによる罰金警告――MS訴訟を巡る最新動向(2/2 ページ)

» 2006年03月06日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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 ECが言い渡した2004年4月の是正命令の一環として、MicrosoftにはWindowsクライアントとWindowsサーバ間の通信に使われているプロトコルをライセンス提供することが義務付けられている。ECがこのような命令を下した目的は、Microsoftの競合企業がWindowsサーバとまったく同じ方法で当該プロトコルを使用できるサーバ製品を開発できるようにすることである。ECは、その結果として同社が自らの独占的なデスクトップOS市場の立場を不正に利用して、サーバ市場での優位性を確保することを阻止できるとしている。

 同社は、(是正命令の差し止めの申し立てが棄却された後)2005年初めから当該プロトコルのライセンス提供を開始している。しかし、同年6月にECは提供されている技術文書が不十分であるとし、同年12月までに適切な情報を開示するように同社に求めていた。しかし、12月に提出された遵守状況監視者による報告では、提供されている情報はいまだに不十分であり、開発者が「提供されている文書を基に開発を進めることは完全に不可能」で、「抜本的な改訂」が必要であるとしている。

 この報告に対するMicrosoftの異議申し立ての期間として、ECは2005年2月15日までの猶予を設けた。その間、同社は当該プロトコルの基盤となるWindowsソースコードのライセンス提供を開始したが、EC側はこの措置だけで問題が解決されることにはならないとしている。これに対し、同社は新たな措置を講じることなく2月15日の期限を迎えた一方、これまでに12,000ページもの技術文書を公開し、ライセンシーに対して500時間の技術サポートを提供してきた実績があることを顕示している。しかし、EC側は、問題は技術文書の量ではなく内容にあるとする姿勢を一貫として崩していない。

 本稿リリース時点では、次の罰金命令は出されていないが、これはいつ現実のものとなってもおかしくはない。一方、Microsoftは問題の発端となった是正命令に対する抗告を申し立てており、この審議は4月に開始される予定である。

最近の特許訴訟関連動向

 2005年12月の財務報告によると、Microsoftは現在35以上の特許関連訴訟に関わっている。2005年12月以来、このうち2件の係争が同社の勝利のうちに収束したほか、新たに1件の特許侵害訴訟が提起されている。

MicrosoftのFAT関連特許の有効性を支持
 米特許商標庁(USPTO)は、2006年1月にFAT(ファイルアロケーションテーブル)に関する2つのMicrosoftの特許の有効性を支持する最終判決を下した。FATは、物理的な記憶媒体(ハードドライブやリムーバブル記憶装置など)上に格納されている各ファイルデータの場所を示すためのファイルインデックスシステムである。問題の特許技術は、リムーバブルメディアを使用する機器(メモリカードを使用するデジタルカメラなど)のメーカーが頻繁に利用しており、2003年12月からMicrosoftは同技術の使用に際してライセンス料の徴収を開始した。2004年に非営利団体のPublic Patent Foundation(PPF)がUSPTOにこれらの特許の幾つかについて再審査を要請したが、USPTOは先行技術に関するPPFの主張を退け、Microsoftの特許の有効性を支持した。

プリンタ技術関連における特許訴訟での勝利
 学術特許の営利化を専門とする企業Research Corporation Technologies(RCT)が提起した特許侵害訴訟において、Microsoft側の主張を認める判決が下された。RCTは2001年に、ドットパターンを使用して網掛け領域の作成を可能にするプリンタ技術に関連する幾つかの特許について、Microsoftを相手に訴えを起こした。2004年1月にはRCTの主張を支持する略式判決が出されたが、Microsoft側が上訴し、その後2005年4月と2006年1月に出された2つの判決ではRCT側の主張が退けられた。

VistoによるWindows Mobile 5.0への提訴
 2005年12月にモバイル電子メールソフトウェアの開発メーカーVistoが、Microsoftを相手取り訴訟を提起した。訴えでは、スマートフォンなどのモバイル機器用のMicrosoftの最新OSであるWindows Mobile 5.0が、サーバと携帯電話間での情報転送に関する同社特許のうち3件を侵害しているとしている。

 NTPとResearch In Motion(RIM)の2社間でも同様の係争があり、これは広く話題になったが、本訴訟はこの係争の発生直後に提起されている。NTPとRIM間の係争は、NTPがRIMを特許侵害で提訴したもので、NTPはRIMの人気のモバイル電子メールサービスBlackBerryに対する差し止め命令を勝ち取っている。RIMの抗議材料はほぼ底が尽きており、2006年春にもBlackBerryの提供打ち切りを余儀なくされる可能性がある。VistoはMicrosoftに対する訴訟の提起直前に、自社のソフトウェアに対してNTPの特許ライセンスを受ける契約をNTPと結んでいる。

Microsoftの前役員Lee氏を巡る係争が収束

 Microsoftの前役員Kai-Fu Lee氏を巡る係争が収束した。同氏は2005年夏に同社を退職し、Googleへ移籍している。MicrosoftはLee氏の退職直後に訴訟を起こし、同氏はMicrosoftと交わした雇用契約条項により、Microsoft退職から1年間は直接同社と競合する企業では就労できないと主張していた。2005年9月に、同氏のGoogleの検索テクノロジ関連の業務の遂行を禁止する仮差し止め命令が下された。ただし、同氏が中国に開設されたGoogleの研究開発センターの人材採用業務を行うことは認められていた。

 2005年1月に裁判が予定されていたがこの審理開始前に、両社およびLee氏の間で、示談により本件に関する全面的な和解が成立した。この示談の条件では、両社とも本件に関する新たな情報の開示、ならびに本件について公の場での発言を禁じている。

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